「韓国民主主義の申し子」たちの怒りと熱情
2016年11月30日
民主国家においては、たとえ自らが支持する政党あるいは個人が政権を取れなかったとしても、選挙を経たことで、その代表者を国として信任したこととなり、権力が付与される。
その力は元々保持していた軍事力を背景にしたものであったり、権力者である親から受け継いだものであってはならないとの共通理解があり、選挙という過程を経ているからこそ、代表者は時に世論と異なっていても一貫した政策を押し進めることができる。
そして、その最終的な判断を行うことに対して、プレッシャーがあったとしても、それを公僕として受け止め、着々と遂行することが国のリーダーには求められる。
翻って、現在、韓国で問題になっているのは、大統領が自らの親友に官僚などが検討し終えた段階での一級の機密情報を漏らし、最終判断への助言を求めていたという事実である。
つまり、選挙で選ばれた者でもなく、公務員試験や高度の大学教育を経たわけでもない個人が、大統領との個人的信頼関係によって、重要政策の最終判断すら行っていたことが問題視されているのである。その状況こそが、韓国人の怒りに火を点けた。
中でも、大統領が漏らしたとされる文書の中には、北朝鮮に対する安全保障政策、あるいは日本や中国との外交に関わるものがあったとされる。それらの問題は、徴兵制や貿易収支の変化に伴う税金の増減といった形で国民の生活や人生に直結する。
本来、そうした問題は個人では対処できないことから、国が存在し、選挙によって選ばれた代表者が政策を遂行していくのであって、そこに国民が関知しない友人の声が重視されては民主国家の根本は崩れてしまう。
もちろん、そうした問題と共に、大統領と通じていることを背景に、崔順実(チェ・スンシル)被告が多くの利権や娘の学業等に関わる個人的な優遇措置を画策したことも、国民の怒りを呼んでいる。(1)文化やスポーツに関わる財団を設立し、幽霊会社などを通じて補助金を取得する手法、(2)財団への資金集めに際した大統領の利用、(3)自らの子弟の大学入学や大学生活の優遇等は、多くの一般市民が各種の競争や格差社会の下方に位置づけられながらも、国民としての義務を愚直に果たしている状況との間に大きな齟齬と怒りを生んだ。
崔被告らは国民により選ばれた大統領の権限を笠に着て、自らの利益を追求した可能性が高い。ただ、そうした汚職は
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