安倍自民に4つの逆風
2016年12月07日
衆議院解散総選挙の時期が話題になっている。一時期、強い解散風が吹き、早期の衆議院解散は避けられないといわれたが、ここにきて安倍首相も二階自民党幹事長も急にトーンダウンしている。朝日新聞DIGITAL(11月24日)に二階派の会合での二階氏の発言が掲載されている。「すぐ今解散する、というふうなことはないことは、大体このなぎの状態で分かっていると思いますが、一日も一刻も油断をしないで」。年内解散はないとにおわせながら、油断するな、というのだから、言葉をまともに受けるわけにはいかない。安倍首相周辺が「解散はない」と言えば言うほど、解散のサプライズ効果を狙っているとも考えられる。
ただここにきて予期しない展開もある。まずはトランプ氏のアメリカ大統領選での勝利により、アメリカがTPPに加盟しないことがほぼ明確になったことだ。アベノミクスの次のステージにおいてTPPは一つの目玉であった。日米を基軸とした自由貿易を進め、「攻め」の貿易政策を展開することが日本経済の活性化につながるはずであった。アメリカ抜きのTPPも意味がないわけではないが、迫力不足の感は否めない。
第2の誤算、あるいは誤算になりうるのは北方領土問題の進展である。日露首脳会談の日本での開催は、北方領土問題の進展を期待させている。少なくとも2島返還があり、日露平和条約の締結への道筋が見え、日露間のダイナミックな経済協力ができるのではないかという見方があった。しかしこれまでのプーチン政権の言動からすると、北方領土問題の進展はほとんどないと思われる。北方領土問題の歴史的な進展の直後に、衆議院解散総選挙というシナリオは今のところ難しそうだ。
また日中韓首脳会談の開催も微妙になっている。これはいうまでもなく、韓国での崔順実ゲート問題の浮上だ。朴槿恵大統領の弾劾訴追が現実的になっており、韓国情勢は目まぐるしく変化している。朴大統領の代理の出席は可能ではあるが、常識的に考えれば状況がより明確になってからの開催となるだろう。日本にとって中国・韓国との冷えた関係を修復することは大きな意味がある。日中韓首脳会談はそのための象徴的なものとなるはずだ。安倍外交の成果の一つになるものだが、おそらく延期されることになるだろう。たとえ開催されたとしても、3カ国の中の1カ国の首脳が代理では迫力不足だし、準備も整っていないことから成果は限定的にしかならない。
さらに、OPEC(石油輸出国機構)が8年ぶりとなる減産に踏み切ることで最終合意したと発表し、今後、原油価格の上昇が予想される。これは日本経済にとっては逆風となる。ガソリン価格の値上がりなどは消費者の懐に直接的に響くし、製造業や運輸業にも負担増になる。安倍自民にとってマイナス要因だ。
確かにこうした逆風はある。しかしそれでも私は安倍首相は早期解散に踏み切ると予想している。
まず第1にこの程度の与党への逆風は、仮に選挙を延期してもありうることだ。むしろ延びれば延びるほど、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください