機体に構造的欠陥があるオスプレイに向き合っているのか?
2017年01月05日
日本政府が米国に自らひざまずき、「属国」「植民地」を買って出る。沖縄に犠牲を強いることで「日米同盟」による安全保障の利益を得る姿は、沖縄からは醜く映る。沖縄で起きたオスプレイ墜落事故は日米のそんな関係を、より鮮明にした。
機体は陸地から約80メートル沖の浅瀬で、胴体や翼がばらばらに分離し大破した。米軍は事故原因についてKC130空中給油機からの空中給油訓練中に切れたホースがプロペラを損傷したと説明した。同じ日の夜、配備先の普天間飛行場に別のオスプレイが胴体着陸した。
名護市でのオスプレイ墜落事故を受け、第11管区海上保安本部は米側に事故について捜査への協力を申し入れた。しかし米軍は回答せず、証拠物件の機体を回収した。在沖米海兵隊は12月21日、琉球新報に対し、その法的根拠は日米地位協定だとして、こう回答した。「日米地位協定は米軍機の事故に関する独占的権利を与えている」。
在沖米海兵隊は「日米間の合意に沿って行う」とした上で「調査結果は提供可能になり次第、日本政府に提供し、公表する」とした。しかし第11管の捜査申し入れを無視し、事故原因解明に欠かせないフライトレコーダーは米軍が回収した。結局、第11管は米側の協力が得られないため、現場に入れず機体の調査もできないまま、米側は機体の主要部分の回収をほぼ終えた。
日米地位協定17条は原則として、米軍への提供区域内外を問わず日本側は米軍財産の捜索・差し押さえなどができないと規定している。米軍の同意があれば日本側が捜索できるとの文言があるが、その文言は形骸化している。2004年、沖縄国際大に米軍ヘリが墜落した時も県警の捜査申し入れを米軍は拒否した。今回も協力申し入れを無視することで事実上、拒否している形だ。
事件事故があった場合、捜査機関は発生した状況で現場を保全し、証拠を集めて事故原因、過失の有無などを検証するのが基本だ。一般市民が交通事故を起こしたら、警察はそのような形で現場検証をする。
しかし今回、現場からオスプレイの残骸が一方的に持ち去られたことで、日本側は操縦者らに刑事責任があるかどうかすら調べることができない。日本側による立件の可能性はほぼ断たれた。
だが日本政府は、国民の命や安全に関わる重要な問題であるとして抗議したり、捜査を可能にするため強い交渉をしたりすることもない。主権を行使していない。この不平等な関係に甘んじる姿勢は、沖縄県民の命よりも「日米同盟が優先」といわんばかりだ。
沖国大米軍ヘリ墜落事故の後、日米は基地外での米軍機事故に関するガイドライン(指針)を取り交わした。今回の事故は指針の適用対象になる。しかしこの指針も事故機の管理や原因調査を米軍が優先的に行うという内容で、民間地での米軍の治外法権にお墨付きを与えている。今回の事故でも、その弊害が表れた。
また、米軍が浜を分断する形で張り巡らせた規制線の中に置かれたオスプレイの残骸を、日本側の機動隊が警備した。日本側は、規制の在り方を問題視するどころか、住民の安全よりも米軍の機密を守ることを第一に考えているように見える。
事故のたびに、日米政府による「住民の安全を置き去り」にした対応を目の当たりにしているからこそ、沖縄から日米地位協定を抜本的に変えるべきだという強い主張が出つづけるのだ。
日本がそんな植民地状況に置かれていることは、米軍が駐留しているイタリアのケースとの違いをみればよく分かる。イタリア国内の全米軍基地は、イタリア軍司令官の下に置かれ、米軍は重要な行動をイタリア側に全て事前通告し、演習、軍事物資・兵員の輸送、事件・事故でもその発生を通告することが課せられている。米軍機事故の検証もイタリア側が主導権を持つ。
今回のオスプレイ墜落事故を受け、市民団体が抗議した席で、防衛省の担当者は事故原因について「米側から機械系統や機体構造に問題がないと説明を受けた」と述べた上で「(事故)原因について詳細な説明はない」ことを明らかにした。防衛省が原因を調査する「予定はない」とも述べた。
これに市民側は「米側の言い分の根拠を検証しないでなぜ飛行を認めるのか」と批判、「日本は主権国家なのか」と追及した。
オスプレイの大事故はどこででも起こりうる――米軍機の訓練区域を人が住んでいる場所からいかに遠ざけるか
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