先の見えない現実を生きる人間のリアリティー
2017年01月12日
イスラム世界の映画を集めた「イスラーム映画祭2」が1月14日から20日まで東京・ユーロスペース、21日から27日まで名古屋シネマテーク、3月25日から31日まで神戸・元町映画館で、それぞれ開催される。
上映されるのは、レバノン、チュニジア、エジプト、イラン、インド、パキスタン、バングラデシュ、タイなどで製作された、国際的な映画祭の受賞作品など秀作10作品。第1回映画祭は2015年12月に開催され、映画祭ホームページによると、「映画を通じ、日頃なじみの薄いイスラームの文化や、そこに生きる人々の姿を垣間見る絶好の機会として大きな反響を呼びました」としている。
「イスラム映画」と一口に言っても、舞台となっているのは、中東からインド大陸、アジアまで様々で、政治的状況も、社会的状況も異なる。欧米や日本の映画と異なる「イスラム映画」と呼べるような共通の要素があるのだろうか。あるとすれば、どのようなものなのだろうか。そんなことを考えながら、今回上映の10作品のうち次の6作品を見た。
・『私たちはどこに行くの?』(レバノン/フランス、エジプト、イタリア)
・『敷物と掛布』(エジプト)
・『バーバ・アジーズ』(チュニジア/ドイツ、フランス、イギリス)
・『ミスター&ミセス・アイヤル』(インド)
・『泥の鳥』(バングラデシュ/フランス)
・『改宗』(タイ)
ほとんどの作品に共通するのは、映画で次々と起こる出来事を登場人物と共に体験するような不思議な臨場感である。6作見た中で、最後に全体を包んで完結する大きなストーリーがあったのは、イスラム教徒とキリスト教徒の抗争をテーマにしたレバノン映画『私たちはどこに行くの?』だけだった。
レバノンでは実際に宗教・宗派に分かれて、1975年から90年まで15年間の内戦を経験した。それだけに深刻なテーマであるが、村の女性たちが町からナイトクラブのショーダンサーを村に招いて、戦いにはやる男たちの気持ちをそらそうとするなどコメディータッチで進む。物語の展開も、フランス映画を見るように楽しむことができる。
映画にストーリーがあるのは、当然と思うかもしれない。しかし、ほかの5作品を見ると、ストーリーにこだわらない映画の世界となっている。
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