日韓慰安婦合意の行方よりも危惧されるのは「38度線」の後退である
2017年01月17日
在釜山日本総領事館前に設置された慰安婦像に絡む紛糾は、在韓日本大使の一時帰国を含む日本政府の四項目対抗措置を招いた。ただし、日韓慰安婦合意それ自体は、それが韓国政府の都合によって着実に履行されようと反故にされようと、日本の国際政治上の立場や日本を取り巻く安全保障環境に特段の影響を及ぼすわけではない。
文在寅(「共に民主党」前代表)に代表される韓国野党政治家や韓国左派メディアが主張するように、日韓慰安婦合意が反故にされたとしても、それは、日本の対韓不信の加速と韓国の対外威信の零落を招きながら、事態が二〇一五年十二月以前に戻ることを意味するものでしかない。
日本はどのように「朴槿恵後」に備えるのか?――「離米・親北」傾向にある野党大統領候補
そもそも、日本が対抗措置を打ち出す直前まで、韓国メディアが頻繁に報じていたのは、THAAD配備決定が惹き起こした中韓関係の摩擦であった。
中国政府は、THAAD配備断念を求めて対韓圧力を強めてきたけれども、文在寅のような野党政治家もまた、THHAD配備決定を日韓慰安婦合意に並ぶ朴槿恵政権期の「負の遺産」としてネガティヴに評価していた。
THHAD配備の扱いは、米中両国の狭間で韓国が明らかにすべき「旗幟」になっていたのである。仮に文在寅のような野党政治家が「朴槿恵後」の政権に就き、THHAD配備に関する従来の主張を実際の政策として遂行しようとすれば、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください