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虚実入り交じる暴露の時代が到来

ネット上の偽ニュースが「情報によるテロ」に

土屋大洋 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授

ツイッター上のトランプ大統領は2人いる

拡大トランプ大統領のツイート
 米国のドナルド・トランプ大統領は2人いるという話になっている。ただし、ツイッター上でのことである。

 ツイッターはいろいろなアプリ(ソフトウェア)で使うことができるが、一部のアプリでは、どのアプリや端末からアクセスしているかが表示される。それによると、トランプ大統領のツイートには、スマートフォン(スマホ)のiPhoneを駆使する「iPhoneトランプ」によるものと、Android OSを使ったスマホを駆使する「Androidトランプ」によるものがある。

 トランプ大統領はかねてからサムソン製のAndroid端末を使っていることが分かっている。もちろん、トランプ大統領がiPhoneも持っていて、使い分けているのだとすれば、たいした話ではない。しかし、米国のデータ・サイエンティストのデービッド・ロビンソン(David Robinson)氏が分析したところ、両者のツイートにはそれぞれに特有の癖が見られ、別人によるツイートと見た方が良いということが分かったという。

 iPhoneトランプは、大統領が承認したスタッフが代理でツイートしているのだと見られている。しかし、我々がトランプ大統領本人のツイートだと思っている内容も、実は本人のものではないことがあるということになる。

 より大きな問題は、誰が流しているのか分からず、真偽も定かでないニュースや情報がインターネット上にあふれ始めたことである。特にそれが顕著になったのが、2016年の米国大統領選挙であった。

ひどい暴露合戦だった米大統領選

 そもそも今回の大統領選挙はひどい暴露合戦だった。米国の大統領選挙では、予備選の段階からさまざまな暴露が行われるのが常であり、スキャンダルを暴露された候補者は次々と選挙戦から脱落していくのが通例であった。ところが、ヒラリー・クリントン民主党候補も、ドナルド・トランプ共和党候補も、数々の暴露をくぐり抜けてそれぞれの党の指名を勝ち得た。

 クリントン候補の場合、まず問題になったのが国務長官時代に私用の電子メールアカウントを公用に用いていたことであった。国務長官の電子メールには機密情報も送られてくる。国務省の専用の電子メールアカウントを用いていれば問題にならなかっただろう。しかし、おそらくは機密情報保護のために使いにくいシステムであったため、国務長官は省の了解を得た上で私用アカウントを使っていた。

 ところが、彼女の在任中の2012年にリビアのベンガジで米国大使他4人が殺害されるという事件が起きてしまう。遺族たちは、当時のクリントン長官が私用アカウントを使っていたと知ると、そこから機密が漏洩しており、事件につながったのではないかと疑うようになり、クリントン候補は強い批判を浴びることになった。連邦捜査局(FBI)がクリントン候補に事情聴取を行い、公務に関わる電子メールが公開されることになった。その結果、いくつか問題のある機密情報の取り扱いはあったものの、訴追は行わないとFBIと司法省は判断した。

電子メール問題に関与が疑われるロシア軍の情報機関

 クリントンは電子メール問題を逃げ切ったかと思われたが、2016年6月になって、今度はサイバー攻撃によって奪われたと見られる民主党全国委員会(DNC)の電子メールが暴露されてしまう。暴露情報サイトとして知られるウィキリークスや、Guccifer 2.0と呼ばれる人物が解説したサイトなどで公開された。Gucciferはもともとルーマニアの悪玉ハッカーのハンドルネームで、彼はすでに有罪で収監されている。Guccifer 2.0はもとのGucciferとは関係ない。米国のインテリジェンス(情報・諜報)機関は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)が関係していると見ている。

 DNCの電子メールによって ・・・ログインして読む
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筆者

土屋大洋

土屋大洋(つちや・もとじろ) 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主任研究員などを経て、2011年4月から現職。専門は国際関係論、情報社会論、公共政策論。主な著書に『サイバー・テロ 日米vs.中国』(文春新書、2012年)、『サイバーセキュリティと国際政治』(千倉書房、2015年)、『暴露の世紀』(角川新書、2016年)など。