カギ握る大統領選の行方、日本に好ましくないシナリオも
2017年03月16日
韓国で歴史上初めて、大統領の罷免が決まった。韓国憲法裁判所は、3月10日に朴槿恵大統領に対する弾劾審判の宣告で、裁判官8人全員一致で大統領の罷免の決定を発表した。韓国の憲政史上、弾劾審判は2004年の盧武鉉大統領に続き2度目となるが、盧武鉉大統領の際は否決されており、現職大統領が罷免されるのは史上初となる。
韓国における大統領の権限とステータスは極めて高い。その現職大統領が罷免されたわけで、衝撃は大きい。大統領職を失職した朴氏は、おそらく逮捕され、裁判にかけられることになるだろう。有罪となる可能性が極めて高い。そうならなければ、「大統領罷免」との整合性がとれなくなる。今回の朴大統領の罷免は逮捕されているサムスン電子の李在鎔副会長の裁判にも影響を与えるだろう。総じて、韓国経済は大きな打撃を受けることになる。
さて、韓国の一連の騒動は日本にどのような影響を与えるだろうか。
日本にとっては韓国の混乱は、マイナスの影響が大きいといえる。後述する大統領選の行方がかなり左右するが、今のところは、日本には好ましくないシナリオとなりそうだ。
朴大統領は、就任した時は、日本との関係で新たな展開が期待されたが、結局、最初の3年間は、反日政策ともいえる厳しい態度で日本に対応した。竹島問題や従軍慰安婦問題でも強硬な姿勢をとり、外遊先で日本批判を繰り返す「告げ口外交」も行った。韓国経済は就任してすぐは中国貿易の拡大もあり、順調であった。日本経済の停滞もあり、韓国は日本に追いつき、追い越せるという感覚もあったのだろう。中国との関係を重視し、3年間は中国と蜜月期といえた。
しかし、中国経済が成長を鈍化し始め、韓国経済も低迷期に入り込むようになった。その状況下で、北朝鮮は核実験やミサイル発射など挑発行為を繰り返し、朴大統領は戦略を変え、日米との関係改善につとめるようになる。日本とは慰安婦問題に関する「合意」を安倍内閣と結んだ。これで日韓関係は改善に向かうはずであった。アメリカとはTHAAD配備を決定し、米韓軍事同盟の堅持を明らかにした。
その後に、朴槿恵大統領とその友人で実業家の崔順実を中心とした政治スキャンダルである、いわゆる崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件が勃発し、支持率は急降下した。そして今回の大統領罷免につながった。
韓国ではこの状況下で、朴大統領路線の否定が求められるようになった。総じて言えば、朴政権は反日政策をとっていたのだが、最後の段階で、日本との融和政策を打ち出したわけで、その融和政策が否定されることになりそうなのだ。
韓国の反日政策の一方で、日本では嫌韓ムードが漂った。かなり長期にわたって日韓関係は悪化してきた。それに変化が訪れようとしたところで、またさらに関係悪化の可能性が高まっているのだ。
現在、次期大統領選で最有力とされているのが、共に民主党の文在寅・前代表である。世論調査での支持率では、他の候補を引き離してトップを独走している。前回の大統領選でも敗れたものの朴氏に迫る票を獲得しており、知名度も高い。方向性は明確で、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください