彼女は「法治国家」が自身を守ってくれていることを知っているのか
2017年03月17日
決定文は簡潔で、しかも全員一致。その瞬間、バスや地下鉄の車内、オフィスなどでも歓声があがり、ソウルの光化門広場の「ロウソク集会」は歓喜に包まれた。SNSも勝利のメッセージで埋まったのだが、海外からの呼応も面白かった。「民主主義万歳!」と韓国人が書けば、ある在日韓国人は「もう一つの祖国である北(朝鮮)にも弾劾制度があればいい」とつぶやき、「OK、次はトランプだ」と書いた米国人もいた。
その一方で憲法裁判所前に結集していた「弾劾反対派」は大荒れとなり、ついに死傷者まで出る事態となった。
前回、「広場で対峙する2つのデモ」について、「過激な行動が心配されるのは、むしろ年配層が多い保守勢力の方」と書いたが、その通りの結果となった。彼らは機動隊のバスを乗り越えて裁判所に突撃しようとし、制止する警察官や取材中の記者らに暴行を加えた。
日本の若いメディア関係者などには、彼らの暴力性に驚いている人もいたが、長く韓国で暮らした者にとっては、これまでも見てきた光景だ。前回も書いたように、弾劾反対派の中心は退役軍人や保守系キリスト教団体の関係者など「従来からの右派勢力」であり、彼らは様々なシーンで「活躍」してきた。
私自身がまず思い出すのは2000年6月、ベトナム戦争時における韓国軍の虐殺行為を告発したハンギョレ新聞社への襲撃事件だ。この時は新聞社内に乱入した2000人余りの退役軍人が、手に持った角材でパソコンや輪転機を破壊し、記者などにも暴行を加えた。
また日本との関係でいえば、竹島(韓国名「独島」)問題などで、異様なパフォーマンスを繰り広げるグループもある(日本人の中には誤解もあるようだが、韓国で「竹島問題」と「従軍慰安婦問題」に取り組む人々はまったく系列の違う人々だ)。ちなみに産経新聞の元ソウル支局長を「朴大統領に対する名誉毀損」で訴え、車に生卵をぶつけるなどした団体の1つは、「独島を愛する会」という名称だった。
「あの世代は暴力的な空気の中にいたから」――と韓国人が言うのは、それとは別の意味もある。
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