ベタな修正が「ニッポン・イデオロギー」に踏み込むまで
2017年04月04日
彼等は毎朝主人の食う麺麭〔パン〕の幾分に、砂糖をつけて食うのが例であるが、この日はちょうど砂糖壺が卓〔たく〕の上に置かれて匙〔さじ〕さえ添えてあった。(夏目漱石『吾輩は猫である』より)
食べ物のことでとやかく言うとはまったく野暮な話だが、その注文とは「学習指導要領の示す内容に照らして、扱いが不適切」というものだった。出版社側は検定を通過するために記述を以下のように改めた。
▽「にちようびのさんぽみち」という教材で登場する「パン屋」を「和菓子屋」に(同、小1)
▽「大すき、わたしたちの町」と題して町を探検する話題で、アスレチックの遊具で遊ぶ公園を、和楽器を売る店に差し替え(学研教育みらい、小1)――。
「パン屋」、「アスレチックの遊具で遊ぶ公園」、これらのいったい何がダメ出しをくらう理由となったのか。文科省側からは「パン屋がダメというわけではなく、教科書全体で指導要領にある『我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ』という点が足りないため」と説明があったという。「アスレチック」も同様の指摘を受け、出版社側が自主的にベタに日本的なものに修正したのだった。
この「事件」を受けて「まさかこの国で、パンを買うことが政治性を帯びる日が来ようとはね。いやあ、まいったな」と筆者がFacebookとtwitterに書いたところ、尊敬する先輩の保守主義者より、木村屋のあんぱんは明治大帝の御用達であったのに、とのご返事をいただいた。
たしかに言われてみれば、むかし紀伊國屋ホールで観た井上ひさしの演劇『しみじみ日本・乃木大将』でも「あんぱんの中心にある桜は皇后発案」というシーンがある。
してみると、パンというのは
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