学校の組体操にも立憲デモクラシーの危機はある
2017年04月20日
注)この立憲デモクラシー講座の原稿は、2016年11月18日に立教大学で行われたものをベースに、講演者が加筆修正したものです。
立憲デモクラシーの会ホームページ
http://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/
人権というのは、確かに大事で、「人権って大事ですよね?」と言えば、これはたぶんほとんどの人が、否定しないと思います。安倍首相に「人権って大事ですか?」と質問すれば、安倍さんだって「大事です」って言うでしょう。しかし個別具体的な場面において、人権が大事である、人権を貫くという選択をすることは、しばしば極めて難しいということになります。
その一例を挙げてみたいと思います。資料の4ページからになりますが、「現代ビジネス」に私が書いた「これは何かの冗談ですか?」というタイトルの記事を挙げております。「現代ビジネス」というのは講談社のウェブサイトで、ことしの1月に依頼を受けました。私は「キヨミズ准教授の法学入門」という法学入門書を講談社の系列出版社から出しておりまして、その本を紹介する記事を書いてみませんか? と言われて書いてみた原稿です。ただ単に本の内容を説明して、「おもしろい本だから読んでよ」と言っても、あまりいい感じの記事にならないわけですね。それこそ「俺は最高法規だ」と言っているような感じがしてしまう。もうちょっと、ひねった形で導入しようということで、広島県の道徳教材を扱いながら、話を進めるというふうにしてみました。
広島県の道徳教材に、「心の元気(組体操)」というタイトルの教材がありまして、これはちょっと前からネットで話題になっていました。組体操がとっても危険だということが、2014年ぐらいから言われてきました。
教育社会学がご専門の名古屋大学の内田良先生は、学校の中にある危険をテーマに様々な原稿を書かれていらっしゃいます。内田先生は、武道必修化が話題になったときに、柔道で死んでいる人がたくさんいるというような話を書いておられます。内田さんがいろいろ分析すると、大外刈という技が危険であることが判明しました。大外刈は技としては簡単なので、柔道教育で初心者にやらせることがある。しかし、かけるほうはかけやすいんですが、かけられるほうは、後ろにバタンと倒れて、頭を思いっきり打ち、脳しんとうで死亡という事故が本当に何件も出ていると。事故のデータを分析して、柔道指導は本当に気をつけないと、ものすごく危険なことなんですよ、と日本社会に警鐘を鳴らしている。
そんな中、組体操の危険を啓発する業界がありまして、そこでは広島県教育委員会の道徳教材が話題になっておりました。道徳教材でありますから、例によって物語であります。こういう物語です。舞台は運動会の前日。最後の練習ということで、小学校6年生の主人公つよしくんの学校でも、組体操の練習をします。「最後の練習だ。笛の合図でだんだんとピラミッドができあがっていく。二段目、三段目」……四段もやっています。怖いですね。「とうとうぼくの番だ。手と足をいつもの場所に置きと思ったしゅん間、ぼくの体は安定を失い、床に転げ落ちていた。かたに痛みが走る。ぼくはそのまま病院に運ばれた。骨折だった。ぼくは、目の前がまっ暗になったようで何も考えられなかった」というふうに続いております。
ここから、普通に考えるとどうなるか。私なりに考えると、
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