櫻田淳(さくらだ・じゅん) 東洋学園大学教授
1965年宮城県生まれ。北海道大法学部卒、東京大大学院法学政治学研究科修士課程修了。衆議院議員政策担当秘書などを経て現職。専門は国際政治学、安全保障。1996年第1回読売論壇新人賞・最優秀賞受賞。2001年第1回正論新風賞受賞。著書に『国家への意志』(中公叢書)、『「常識」としての保守主義』(新潮新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
北朝鮮の「無害化」で、日本が最も受け容れやすい未来図とは?
金正恩(北朝鮮・朝鮮労働党委員長)体制下の北朝鮮の扱いが、国際政治の焦点になっている。「(北朝鮮の問題を)中国が解決しないというのなら、我々がやる」というドナルド・J・トランプ(米国大統領)の発言や「北朝鮮は最も危険で差し迫った脅威だ」というマイク・ペンス(米国副大統領)の発言に併せ、カール・ヴィンソン空母打撃群急派といった米国の直近の対応は、北朝鮮情勢が「危機」の段階に入っていることを示している。
そもそも、「九・一一」の衝撃が生々しく残っていた二〇〇二年一月、ジョージ・W・ブッシュ(当時、米国大統領)が一般教書演説で「悪の枢軸」と呼んだ三ヵ国の中で、「未だ処理されざる課題」として残っているのは、北朝鮮である。
イラクはブッシュ政権下の軍事行動の結果として、イランがバラク・H・オバマ(米国前大統領)政権下の外交交渉の結果として、それぞれ「悪の枢軸」として語られる理由を消滅させた後では、北朝鮮が最後に残された「宿題」である。
トランプ政権発足以降の北朝鮮の度重なる挑発は、そうした「宿題」の所在をトランプに対して深く印象付けることになった。そうであるとすれば、「強硬」の二文字を以て評されるトランプ政権の対朝姿勢もまた、二十一世紀に入って以降の米国の対外政策路線からは決して逸脱してはいない。その意味を確認することは、重要である。
来る四月二十八日、レックス・ティラーソン(米国国務長官)が呼びかけた国連安保理閣僚会合が開かれる。この会合でどういう議論が行われ、北朝鮮がそれにどういう反応を示すかが、現下の北朝鮮危機の分水嶺になるであろう。米国政府は、「総ての選択肢がテーブルの上にある」方針、即ち「武力行使もある」方針の国際承認を求めるのであろうけれども、それがどのように受け止められるかである。もし、安保理会合での議論が米国の企図した通りに進めば、それは北朝鮮に対する従来の次元を超えた「圧力」になるであろう。
ところで、現下の北朝鮮危機を前にした日本の対応として要請されるのは、「危機」が「有事」に進んだ場合の対応を見極めるのも然ることながら、「有事」の収束以後も見据えた上で、「どのような状態の朝鮮半島が望ましいのか」の議論を始めることである。
振り返れば、明治初年以来、日本の対外政策論議の中では、この件は大事な論点であったはずである。現下の日本は、その議論に再び取り組むべき時節を迎えているのではないか。
筆者が観測する限りは、朝鮮半島の未来図は、大別して次に挙げる二つの場合に分けられる。