国政へ出るなら国際的な信用と通用する常識を身に着けよ
2017年07月19日
「国際的な信用ということほど日本で誤解されていることはない。と言うよりも、そうした観念が全然頭にないのである。その代わりに国威を宣揚するという考えがあって、これはどういうことかよく解らないが、要するに、外国人に向かって大に威張って見せることらしい」(吉田健一「吉田内閣論」『日本に就て』、ちくま学芸文庫、2011年、284頁)
政党や政治家を見分けるのにかんたんな基準がある。それはかれらが過去、支持者獲得と票集めのために、人種差別や歴史修正主義といった、近代的な価値観を踏みにじるような、人として越えてはいけない一線を越えたことがあったか否かだ。言葉は人なり。もちろん、このことは政治家に限ったことではなく、人を見る上で重要な目安である。
勢いやイメージが先行して、まだその実態がよく知られていない政治家の場合、こうした言葉の「身体検査」は、今後の政治を託す上でやっておくに越したことはない。そこで今回は今後への期待を込めて、先般の都議会議員選挙で55人もの当選を果たし圧勝した都民ファーストの会のトップが、過去にどのような言葉を発していたのかを振り返ってみたい。
というのも、かれらは「国民ファースト」として国政に打って出るとの含みを持たせているからだ。したがって、都民ファーストの会は今後、国際的な信用と常識というものに、十分に配慮しなければならない。彼らの失言が人びとの人権を傷つけるのみならず、国益を害しかねないためだ。都民ファーストの会主要メンバーの一挙手一投足は、もはや東京都民だけの関心事ではないのである。
その彼は、2012年9月に地域政党「東京維新の会」を設立し、9月と10月の都議会ではそれぞれ「日本政府や軍が『従軍慰安婦』なるものを、暴行・脅迫・拉致を行い強制連行した事実はない」などと主張し、「日本国憲法は無効で大日本帝国憲法が現存する」との請願に賛成した過去がある。
典型的な極右思想の持ち主と受け取られる発言や振る舞いである。 むろん、このままでは国際社会では相手にされないどころか格好の攻撃の的であろう。
野田氏については『週刊新潮』に「国民主権放棄」のほかにもアントニオ猪木参院議員事務所の「公金横領疑惑」が、また『週刊ポスト』にはポールダンサー嬢らとの「六本木ハレンチ豪遊」が報じられている。
とまれ、何よりも振り返ってみるべきはこの野田氏のボスであり、先ごろまで都民ファーストの会の党首で、地方自治の二元代表制の原則に反するとして党首を辞任した小池百合子都知事の言動だろう。
都民らの閉塞感の受け皿となった小池都知事は、築地市場の豊洲移転問題等に注目が集まりがちだが、都民ファーストの会が国政を伺おうとしている現在、やはり注目すべきは彼女の国家観である。小池都知事の過去の言動は、果たして国際社会の信用に耐えうるものだろうか。
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