就任3カ月で支持率が急落。ふたつの「顔」を持つ大統領を待ち構える〝熱い秋〟
2017年09月08日
日本からやってきたフランス通が、「マクロンはもうダメでしょ」と言った。本当にダメなのか。
確かに、エマニュエル・マクロン大統領の支持率は就任3カ月にして急落した。就任直後に60%台だった支持率は40%だ(8月27日付の日曜新聞・ジュルナル・デュ・ディマンシュ)。前任者たちの同時期の支持率、例えばフランソワ・オランド前大統領の54%、ニコラ・サルコジ元大統領の67%と比べてかなり低い。オランドの場合、最終的には20%前後まで下がり、再出馬を断念した。サルコジの場合は、50%を割ったのは就任翌年の年頭だったが、再選は果たせなかった。
しかもマクロンには〝熱い秋〟が待ちかまえている。共産系労組・労働総同盟(CGT)が9月12日にマクロン政権の目玉である労働改正法に反対してデモを計画。ジャン=リュック・メランション率いる極左政治グループ「服従しないフランス」も9月23日に大規模デモを展開する。
支持率急落の主要因は、10%前後の高失業率の解消を目的にした労働改正法と財政赤字削減のための緊縮財政だ。ふたつとも約20年来、左右の政権が公約に掲げたものの、果たせなかった難題だ。
とはいえ、議員経験のない弱冠39歳のマクロンが大統領選で勝利したのは、既成政党に失望した国民が「左派でも右派でもない」政治信条を掲げたマクロンに、「希望」と「変革」を託したからだ。マクロンがいみじくも指摘したように、「フランス人は改革嫌い」(8月24日、ルーマニアの仏大使館での演説)。改革を嫌ってニッチモサッチモいかなくなったところで、「革命」が起きるのがフランスの歴史のパターンだが、労働改正法はまさに「コペルニクス的革命」とマクロンは自負する。
従来の労働法は、「3人の弁護士が3年がかりでやっと1人を解雇」といわれるほど、経営者側に厳しかった。それが正規雇用を控える要因となり、高失業率の元凶でもあった。だが、逆から言えば、被雇用者に有利だったわけで、改正するとなると国民議会(下院)での審議は紛糾は必至だ。そこで、マクロン政権はオルドナンス(政府への授権による立法)を利用するという奥の手を使った。メランションが「社会的クーデター」と怒り、大規模デモを呼び掛けたゆえんだ。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください