旧来型と企業型の両面を持つ過渡期の政党を超えた、新しい時代の政党づくりに挑め
2017年09月20日
不祥事にまみれた幹事長候補の離党だけでなく、路線問題を理由に元代表代行らが相次いで離党するなど、ごたごた続きの民進党。党首に就任したばかりの前原誠司氏は、政権奪取に向けてスタートを切るどころか、防戦に追われっぱなしだ。これに対し、内閣支持率の急落に苦しんでいた安倍晋三首相は、内閣改造を機に支持率を回復させているばかりか、9月28日召集の臨時国会で衆議院を解散し、総選挙に臨む動きをみせている。
早期の「解散-総選挙」が現実のものとなれば、候補者の擁立も、野党間の選挙協力も間に合わない野党は、苦しい選挙戦を強いられることになる。民進党のふがいなさが、安倍首相にやりたい放題を許しかねない状況となっているのである。あれもこれも悲観的な話ばかりである。しかし、ここはあえて、今の苦しい状況は、民進党が次の時代に向けて新しい政党像を作り出す好機ととらえてみたい。
これまで民主党、あるいは民進党を離党した議員は数多いが、離党予備軍と言われている議員を含めてその経歴を見ると、政党を転々と渡り歩く「渡り鳥議員」が少なくない。そうした議員にとって、おそらく自分が属する政党は、自らの思想信条、あるいは政策を実現するための組織ではなく、選挙に当選するための道具でしかないのだろう。
彼らは政党をまるで就職先の企業のようにでも考えているのか、選挙が近づくなか、所属する政党の調子が悪いとなると、簡単に「離党カード」や「新党カード」を切り、人気ある政治家のもとに走り去っていく。
だが、これは民進党に限ったことではない。
戦後長らく、日本の政界では主要政党と呼ばれる5~7の政党が、国政選挙で議席を獲得してきた。ところが、自民党政治のほころびが顕在化し始めた1990年代に「新党ブーム」が巻き起こり、今日に至るまで、新しい政党が登場しては消える状況が続いている。
こうした政党乱立の時代に、昔ながらの党名と組織を維持しているのは、「自民党」と「公明党」と「共産党」の3党だけである。これらの政党は単に長い歴史を持っているというだけでなく、自前の全国組織と強固な支持組織を持っている点で共通している。政策の面でも、それぞれが一定の独自性を持っており、政党名を聞いただけでその特徴をイメージできるほど、国民の間に定着している。
国民は、支持、不支持は別にして、様々な支持組織などが主張する利益をまとめ上げ、国政に反映させるべく活動してきたという安定性と信頼性を、これらの伝統的政党には感じている。
これに対し、できては消えた数多くの「新党」はどうか。
最も多いのが、議員になりたい人たちが、幅広く国民の支持を得ている首長や特定の政治家のもとに集まり、その人気を利用して議席を得ようとする「選挙互助会」に過ぎないという指摘だ。
これらの新党には、伝統的政党が持っている組織の安定感、所属議員の同一性や類似性、政党組織としてのまとまりや求心力などはない。多くは政権獲得を真剣に目指しているわけでもないため、国家のグランドデザインづくりなどにはエネルギーを注がず、目先の人気取りに奔走しがちである。
そのため、一時的には話題にはなるものの、たちまち忘れ去られ、環境が悪化すると、次なる「生息地」を求めて、議員らが離党したり、解党したりする。1994年に成立した政治改革関連法によって導入された政党交付金制度が、こうした安易な新党づくりの動きを加速させている。
多くの新党が似たような経緯をたどって消えているにもかかわらず、昨今の「小池新党ブーム」に見られるように、有権者はこの20年余り、新党の登場を歓迎し、一票を投じ続けてきた。そこには、前記の伝統的な3党、特に長く政権政党の地位を維持してきた自民党に対する不満や批判があるのだろう。
「政官業の三角形」、あるいは「利益誘導政治」という言葉に代表される自民党政治の本質は、日本経済が高度成長時代から低成長時代に移り、社会が急速に少子高齢化に向かっている今も、基本的に変わっていない。財源があろうがなかろうが積極財政を展開し、その結果、国家財政は世界でもまれに見るほどの累積債務を抱えている。そんな昔ながらの自民党政治に、少なからぬ国民が不安を抱きながら、次なる政党の登場を待ち望んでいる。それが、新党への期待と失望の連続を惹起しているのだろう。
すでに記憶のかなたになってしまったが、民進党の前身の民主党もまた、自民党政治を否定することでスタートした新党であった。
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