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マクロン政権の目玉、ユロ氏の革命的な排ガス規制

カリブ海に浮かぶ仏領の島を襲ったふたつの巨大ハリケーンで「正論だ」との受け止めも

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

排ガスの少ない車への買い替えに補助金

 「風が吹けばおけ屋が儲(もう)かる」とは意外な相乗効果のたとえだが、マクロン政権の目玉であるニコラ・ユロ環境連帯移行相(国務相=副首相格、62歳)の奇想天外とも思える排ガス規制は、9月に仏海外領土県グアドループを2度にわたって襲った大型ハリケーンによって、「正論だ」との受け止めが強まっているようだ。

 9月18日、ユロは2018年から実施する排ガス規制の具体策「気候連帯包括方式」を発表した。低所得者を対象に、排ガスを大量にまき散らす自家用車などを排ガス量の少ない車に買い替える場合は500ユーロ~1000ユーロ(1ユーロ約130円)、排ガスゼロの電気自動車への買い替えの場合は2500ユーロの補助金を支給するほか、石炭使用の暖房装置の買い替えにも補助金を支給するなどの4項目を盛り込んだ画期的な内容だった。

 ユロは就任後初の7月6日の記者会見で、「2040年までにすべてのガソリン及びディーゼル車の販売を停止し、排ガスゼロの電気自動車などの走行だけを許可する」という革命的措置を発表したが、これに対しては、「荒唐無稽」「実現不可能」「電気自動車など高価で買えない」などの批判が噴出した。今回の措置は、そうした批判、反発、不満に対する具体的な回答の第1弾だ。続けて第2弾、第3弾を発表する予定だ。

排ガス規制の発表日にハリケーンが来襲

  ユロが「気候連帯包括方式」を発表したまさにその日、排ガスも要因のひとつとされる気候温暖化が元凶と指摘される大型ハリケーン「マリア」(風速200~250㍍)が、カリブ海に浮かぶフランスの海外領土県マルティニック島(人口約40万、1100平方㌔)と同島に近い海外県グアドループ諸島のサン・マルタン島(人口約3万5千、53.2平方㌔)とサン・ベルテミール島(人口約9500、24平方㌔)を襲った。この二つの小島は10日前の8日にも大型ハリケーン「イルマ」に襲われており、すでに壊滅状態だった。

 遠隔の地の小島とはいえ、フランスの領土だ。フランスの報道機関は連日、トップ級で報道した。国民の注目度は高く、「イルマ」来襲の直後には、マクロン大統領が軍隊、救急隊、憲兵隊の派遣を決めるとともに、野戦用機材や食料、医薬品などとともに、自らも現地入りして、被害状況を視察している。

マクロンの自由自在性に「共感」して入閣

ニコラ・ユロ環境連帯移行相(環境連帯移行省・Crédits : A.Bouissou / Terra)ニコラ・ユロ環境連帯移行相(環境連帯移行省・Crédits : A.Bouissou / Terra)
 環境活動家として人気のあったユロは、ジャック・シラク、ニコラ・サルコジ、フランソワ・オランドの左派、右派両方の大統領から環境相として入閣を懇願されながら固辞してきた人物だ。理由は「政府の枠組みに縛られると、自由な活動ができないから」。

 今回、入閣したのは、マクロン大統領の基本政治、「右派でも左派でもない」という政党政治否定の自由自在性に「共感したから」だ。満を持しての入閣といえる。

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