森友・加計学園問題、憲法改正。首相が隠したい「大事な部分」こそが争点だ
2017年09月28日
全裸で登場し、お盆で大事な局部だけを隠して踊ったりする「アキラ100%」という芸人がいる。カメラに向かって全裸でムーンウォークやブレイクダンスをするが、器用にお盆を動かし、ソコだけ見えないように動く。「テレビで全裸とは何事だ」と批判する視聴者もいるようだが、そのヒヤヒヤする感覚はたしかに愉快で、大きな人気を得ている。
そんなスリルある芸を一国の首相がまねをした――というわけではないのだろうが、大事なところだけ隠して器用に立ち回るという意味では、首相は「アベ100%」とも言える特殊な芸風を築いている。
なにしろ、国政を中断し、国会を解散までしながら、大事な部分はいつも隠しているからだ。
9月25日、安倍晋三首相は記者会見で臨時国会の冒頭で解散をすると表明した。
問題は、この解散・総選挙の争点は何か、ということだ。
毎日新聞の高山祐、西田進一郎記者による検証記事によれば、首相が臨時国会冒頭の解散に踏み切る決断をしたのは9月10日夜。富ヶ谷の首相の私邸で麻生太郎・副総理兼財務相が早期解散を進言したのがきっかけとされる。
背景にあったのは、自民党が9月8〜10日に行った衆院選情勢の調査結果だ。現有286議席から「10〜30議席減」となるが、自民党単独で過半数は維持される。
また、同時期、民進党では「離党ドミノ」が続き、「小池新党(現希望の党)」が候補者選びに入る。臨時国会で審議が始まれば、国会論戦で森友学園・加計学園問題が再燃する可能性もある。<「この機を逃せばさらに議席を減らしかねない」との焦燥感が自民党幹部にも広がった>(同記事)のは、きわめて合理性がある論拠だった。
一方、会見で首相が解散の大義名分に挙げた理由はまったく異なっていた。
それはおもに三つ。消費増税の使い道を変更すること、北朝鮮の拉致や核、ミサイルなどの脅威、そして急速に進む少子高齢化の克服、である。それらを踏まえて、首相は「国民に信を問わねばならない」と語り、この解散を「国難突破解散」と表現した。
だが、この大義名分はどこか疑わしい。そもそもいま、声高に「突破」と高唱するべき「国難」なのか。
第一に消費税について言えば、増税が行われるのは2019年10月と2年も先の話である。増税の使途を組み替えるのであれば、来年の通常国会でも十分対応できる。今の時点で解散までして「問う」ような話ではまったくない。
第二に北朝鮮による脅威。脅威であるのは疑いないが「北朝鮮への対応について国民に問いたい」というのは、具体的に、何をどのように問うているのかわからない。解散しようがしまいが、現政権が「対話」より「圧力」で対抗しようとしているのは、間違いない。だいたい、「脅威だから国会を解散する」というのは理由にならない(むしろ総選挙で政局が不安定になり、マイナスでしかない)。
三つ目の「急速に進む少子高齢化」という課題についても同様だ。会見で掲げた政策は、32万人の待機児童と50万人の介護の受け皿だが、これも解散して国民に問う話ではけっしてなく、むしろ国会でじっくり審議するべきである。
仮に「少子高齢化」という国難において、首相の解散によって今後、新生児数が毎年10%ずつ増えていく〝奇跡〟でも起きるというのなら、多くの国民は喜んで投票するだろう。だが、安倍首相がそんな魔法の杖をもっているはずもない。
こうした状況を踏まえると、この解散は「国難突破解散」ではなく、「私の困難突破解散」というのが正確な表現だろう。この「私の困難」こそが、安倍首相が隠したい「大事な部分」であり、総選挙の真の争点ではないか。
それは何か?大きくは二つある。
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