南北国境の最前線、韓国側の監視所で見た兵士たち
2017年10月05日
この時期、南北の国境線はどうなっているのだろうか。9月27日、韓国北部の春川(シュンチョン)市から北に向かった国境地帯の山中にある韓国軍の監視所を訪ねた。北側の監視所とは500メートルしか離れていない、まさに最前線だ。
訪問したのは非武装地帯(DMZ)と呼ばれる両国の国境線の一帯だ。普通、日本からの観光客が行くのは首都ソウルに近い板門店のDMZだが、今回訪れたのは外国人がほとんど行かない場所で、春川市の北約50キロの国境地帯にある第7歩兵師団(七星師団)の監視所だ。『韓国の軍隊――徴兵制は社会に何をもたらしているか』(中公新書)の著者で春川市にある翰林聖心大学の尹載善教授に軍との連絡をつけていただき、かつて七星師団の部隊員でこの監視所に勤務していた朴潤秀氏に同行していただいた。
ドラマ「冬のソナタ」の舞台となった春川市は韓国北東部にある江原道の中心都市だ。ソウルから車で2時間ほどかかる。市内の春川高校は「冬のソナタ」の主人公が通ったという設定で、巨大なダム湖に浮かぶ小島には二人がデートした並木道がある。
この街は国境に近いだけに朝鮮戦争のさいには最後の激戦地となった。今も全国各地で訓練を終えた新兵が前線に配置されるために集結する地で、韓国軍の基地が集中する。「冬のソナタ」の舞台は、実は軍事都市でもあるのだ。
市街地を抜けて山岳地帯に入ると、行く手にコンクリートの遮断壁がいくつも出てきた。1辺が1メートルほどの直方体のコンクリートの塊が道路際に並ぶ。北朝鮮の戦車が攻めてきた際にはこれで行く手を妨害するのだ。交通のためだけなら造る必要もないトンネルもある。これもいざというときに爆破して行く手をふさぐためのものだ。
間もなく道路の両側には韓国軍の基地が次々に現れた。最初は歩兵の訓練所のような小規模なものだったが、次第に軍用車や倉庫が並ぶ本格的な設備になってきた。
いきなり戦車が10両ほど目に飛び込んできた。道路際の基地から道路側に砲身を向け、いつでも出動できる態勢だ。砲兵部隊の基地には台形をしたコンクリート製の掩体壕(えんたいごう)がいくつも並び、その空洞部分から巨大な砲身が北に向かって延びる。
1時間ほど走ったところで、バリケードが行く手をふさいだ。師団の歩哨所だ。見張りに立つのは完全武装で自動小銃を肩にかけた兵士だが、その表情はいかにもあどけない。
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