難民への対応は確立している。麻生氏に不安をあおる意図はなかったか
2017年10月11日
麻生氏は、朝鮮半島情勢の緊迫時に大量の北朝鮮難民が日本に押し寄せる可能性に言及して、こう述べた。
「どう対応するか。武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない」
衆院選挙で与党に有利になるよう北朝鮮危機をあおったのか、それとも政府の対応策が未整備なので検討を急げと促したかったのか。これだけではやや言葉足らずで、麻生氏がどんな意図で、どういった状況を念頭において発言したのかがよくわからない。
報道直後には「武装難民を射殺してもいいと発言した」と批判的にとらえた人が少なくなかったようだが、そう単純な問題でもなさそうだ。
なぜなら難民であれ、武装勢力であれ、国内に不法に上陸した外国人に対する対応方法はほぼ確立しているといってよいからだ。重要閣僚だからといって勝手な解釈は許されないことくらい、ご本人もわかっていたはずだ。
朝鮮半島有事をめぐる日本の危機管理の検討は、1994年の第1次北朝鮮危機をきっかけに始まった。邦人救出、大量難民、テロ対策、対米支援の4つの主要項目について政府が研究を重ね、その一部は周辺事態法(1999年)や安全保障関連法(2015年)として法制化された。しかし難民対策については、事態の展開が予測しにくいことや防衛関連法に記載がないこと、関係する省庁が多いことなどもあって今も細部の検討や調整が続いているようだ。
政府担当者が描くイメージはおおむね次のようなものだ。情勢悪化に伴い、韓国と北朝鮮から小船などを使って海上経由で脱出する避難民は合わせて10~15万人。日本海の荒波を漂流し、中国・北陸や九州などの日本海沿岸部を中心に各地に漂着・上陸する。感染症や栄養失調を患う人々も多数含まれ、海難救助や医療対応などの保護に加えて、上陸手続きや検疫、収容所への移送、その後の生活支援など多岐にわたる作業が必要となる。
現場では自治体や警察が対応にあたり、中央官庁では海上保安庁や警察庁、防衛省・自衛隊のほか、法務省(入国管理)、財務省(税関)、厚生労働省(検疫など)などが関わることになる。
麻生氏の発言に沿って考えてみよう。仮に武器を持った難民を「武装難民」と呼んだとしても
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください