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小池氏頼りの限界を露呈した希望の党

不可解な候補者擁立。選挙態勢やネット戦略もチグハグ。一時の期待はいま……

高橋 茂 ポリティカル・コーディネーター

はじまりは日本ファースト

 9月19日、私が以前ホームページを制作した知人(都内在住の女性)からメールが届いた。

 「若狭先生より正式な出馬依頼を賜っており、私といたしましては日本ファーストからの出馬を検討しております」とのことで、出馬が正式に決まったらホームページの内容を変更したい、という内容だった。このときはまだ、解散前であったため、私は「詳細が決まりしだいご連絡ください」と呑気(のんき)に返信したのみだった。

 それからわずか5日後の9月24日に、「小池新党から出馬することになりました」と連絡が来たが、その1週間後の10月1日には、「公認取り消しとなりました」という内容のメールが届いた。「希望の党」の結党記者会見が開かれたのが9月27日なので、この間の流れは以下のように推察される。

候補者選びが進まず、ちゃぶ台返し

「希望の党」結党会見でポーズをとる代表の小池百合子氏(中央)。左から2人目は細野豪志衆院議員、右から3人目は若狭勝衆院議員=27日、東京都新宿区「希望の党」結党会見でポーズをとる代表の小池百合子氏(中央)。左から2人目は細野豪志衆院議員、右から3人目は若狭勝衆院議員=27日、東京都新宿区

 若狭勝氏が政治団体「日本ファーストの会」を設立し、代表についたと発表したのが8月7日だ。このときは、まだ小池百合子・都知事はやはり若狭氏が立ち上げた政治塾「輝照塾(きしょうじゅく)」に講師として呼ばれる程度の関わり方だった。

 ところが、9月中旬を過ぎ、にわかに解散風が吹き始めてから、状況が一変した。メディアの解散報道を受け、若狭氏と民進党を離党した細野豪志氏を中心にして候補者選びを加速させようとしていたのだが、若狭氏は政治塾の塾生や自身のツテをたどって内定を出していたようだった。

 ところが、候補者選びはいっこうに進まず、見るに見かねた小池氏が、9月27日に希望の党を結党。ちゃぶ台をひっくり返すかたちで民進党と合流することになったため、公認内定も最初からやり直すこととなった。

 すでに若狭氏から内定をもらっていた候補予定者は、選挙カーやウグイス嬢を手配し、選挙事務所も探して立候補の届け出準備を進めていたため、物理的にも精神的にも追い詰められた。公認を取り消されたことによって、多額の損失を出す候補予定者まで出てきた。

希望の党の「小池パッケージ」戦略

 それでも、希望の党は、公示日になんとか半数を超える235人の候補者をそろえた。しかし、内訳を見ると首をかしげざるをえない。政治経験のない女性が何人もいたり、香川県生まれで香川を拠点として参議院議員も経験した植松恵美子氏を東京6区から出馬させたり……。擁立の理由が見えないのだ。

 私は植松恵美子氏とは多少面識があるが、彼女は聡明(そうめい)で行動力があり、政治家としても信頼に足る人物だ。しかしなぜ、東京6区なのだろうか。まさか、「美しくて優秀な女性をそろえ、小池パッケージにして売り込めば、どこでもいっちょ上がり」ということでもあるまい。

 百歩譲って、それが可能だとしても、あくまで小池氏の支持率が高いことが前提だ。確かに7月2日に行われた東京都議会議員選挙では、多くの女性議員を輩出することに成功した。正直言って、これはそれぞれの候補者の力というよりも、外見(そとみ)を重視する「小池パッケージ」の結果と言えるものだった。もちろん、なかには上田令子氏のように、実績もあり優秀な都議もいる。だが、上田氏は都民ファーストの姿勢に異議を申し立てて、今月はじめに離党してしまった。

 しかし、小池知事の支持率は今、ほとんどの世論調査において、都議選時から大幅に下がってきている。はたして都議選と同じような戦略で、勝ち目はあるのだろうか。

SNSで支援の輪を広げた都知事選

 小池氏が女性候補をそろえる背景には、女性の議会進出を進めるほかに、インターネットとの親和性の高さがあると考えられる。これはメディア戦略にも通じる。

 昨年の都知事選挙では、SNSを通じて小池支援の輪が広がった。支援者はグリーンのものを身につけて演説場所に集まり、熱狂的に応援した。その様子は、さらにSNSで拡散され、理想的なかたちで「風」を作っていくことに成功したのだ。

 これに対し、自民党にはもともと小池氏が代表として作り上げたネット戦略チームがあり、そこから派生した独自メディアやサポートクラブがあった。しかし、自民党本部と都連では組織がまったく異なるようで、都知事選や都議選では機能しなかった。

「希望」が「失望」、さらに「絶望」へ

 7月の都議会選挙では、豊洲問題やオリンピック問題に期待したほどの成果を出せない小池都知事に対する失望も広がってきていたため、都民ファーストの会の勝利は難しいのではないかと予想する専門家もいた。だが、蓋(ふた)を開ければ、圧勝だった。これは「旧態依然のしがらみ政治」を自民党東京都連の代名詞として位置づけた小池氏側の勝利であり、わかりやすい争点を提示された都民が、将来への「希望」を小池都知事とその周辺に託した結果だった。小池氏はこれを国政でもやろうとしている。

 「しがらみ政治」はまさに自民党型政治の代名詞で、「隠蔽(いんぺい)体質」「しがらみ」「組織の圧力」に対抗し、日本に「希望」をもたらす政党としてアピールするつもりだったのが、合流を希望する民進党議員を「選別」「排除」し始めたあたりから、「希望」が「失望」に変わり、「絶望」に向かっているという批判が、ネット上に見られるようになった。さらに、「打倒安倍政権」において同志であるはずの立憲民主党の候補者に刺客を立てはじめたことで、「選挙後に自民党と連立を組むのではないか」という臆測(おくそく)まで生んでしまったのだ。

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