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パリで話題の「シック・ボヘミアン」の愛の結晶

イヴ・サンローランを支えたピエール・ベルジュが心血を注いだ「美術館」が開館

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

サンローランのエスプリがぎっしり

 美術の秋、芸術の秋とあって、フランス各地で様々な展覧会が開催中だが、「シック・ボヘミアン」と呼ばれるパリジャン中のパリジャンの夕食会などで話題を独占中なのがこの秋、パリ(10月4日)とモロッコ・マラケシュ(10月19日)に開館した「イヴ・サンローラン美術館」だ。20世紀後半にモード界に君臨したイヴ・サンローラン(1936-2008年)のエスプリがぎっしり詰まっているうえ、公私ともにパートナーだったピエール・ベルジェ(1930-2017年)との熾烈(しれつ)な愛の結晶でもあるからだ。

 パリの「イヴ・サンローラン美術館」(約450平方㍍)は、最初の店とアトリエがあったパリ16区マルソー大通り5番地にある。1962年1月の最初のショーも同所で行ったほか、2002年10月に引退するまで仕事場として使われた歴史的場所だ。2階には、最初のショーで発表した作品から引退までの代表作が陳列してあるほか、ベルジェとの仲むつまじいシーンなど生涯を紹介するミニ映画室もある。

 見どころは3階にある当時のままのアトリエだ。大きな窓から自然光が差し込む部屋は鏡張りの壁の反射でさらに明るい。デッサン画を描いた長方形の大型の机の上には眼鏡、色鉛筆、お好みの自作のアクセサリー類が並び、壁いっぱいの書棚はインスピレーショを受けた古今東西の書物で埋まっている。敬愛するココ・シャネルやモデルを務めた女優のカトリーヌ・ドヌーブの写真も当時のままだ。

 マラケシュの方は1980年に二人で購入した広大な館(4千平方㍍)の一部(4百平方㍍)が常設展示館だ。フランス領時代のアルジェリア北中部オラン生まれのサンローランは北アフリカの風物を愛し、マラケシュのアトリエでは色彩豊かな異国情緒に富んだ作品を生み出した。

「シック・ボヘミアン」を代表する2人

若き日のイヴ・サンローラン(右)とピエール・ベルジュ(左)=イヴ・サンローラン美術館提供拡大若き日のイヴ・サンローラン(右)とピエール・ベルジュ(左)=イヴ・サンローラン美術館提供

 ところで、サンローランの「美術館」が「シック・ボヘミアン」の間で話題を呼んでいるのは、サンローランとベルジェの2人がまさに「シック・ボヘミアン」の代表でもあり、フランス的エスプリの代表でもあるからだ。

 まさにシックでエレガントで知的で、しかも大胆で革命的なフランス的なるもの、パリ的なるもの、の代表……。

 ココ・シャネルはペチコートで締め付けたウエストから女性を解放し、パンタロンも初めて女性のモードに取り入れたが、一般的にパンタロンを普及させたのはサンローラン。 ・・・ログインして読む
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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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