伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
10月31日付の朝日新聞に、「生きづらい、悩む韓国の若者」という大見出しを見た。「池上彰が歩く韓国 to平昌」シリーズの5回目、ほぼ全面を使った大きな記事だ。
「今の韓国は若者にとって生きづらいと言われる。……大学にやっと入った後も、就職試験の勉強に追われるからだ。大変なストレス社会だという」(同記事)
池上さんは、「公務員試験のために受験予備校に通う大学生」、「受験生たちが缶詰になって勉強する考試院という施設」などを取材し、彼らのすさまじい状況に驚く。たとえば、韓国では公務員試験対策のために大学を休学する学生がいること、彼らが朝7時から夜10時まで、1日15時間も予備校で勉強していることなどだ。
記事は、韓国の若者の環境を総じて大変ストレスフルであるとし、その背景に「就職率が低下」「大企業と中小企業の格差が激しい」「そのための公務員人気」「合格のための過酷な勉強」等を指摘している。
まさにその通りだ。だから韓国の若者の中には、日本での就職を望み、そのために日本語を勉強する人もいることを、以前、このWEBRONZAにも書いたことがある。
また、ここで紹介されている「考試院」という施設は、ソウル市内のいたるところにあり、韓国で暮らす者ならもれなく、その存在を知っている。
リポートの内容はリアルであり、今の韓国社会の若者像を伝えている。ただ、2点ほど違和感を覚えた。