性差別の撤廃、性的暴力は厳罰に。女性を守る施策で次期大統領選での女性票増は確実?
2017年12月04日
フランスのエマニュエル・マクロン大統領が任期中(5年)の重要課題として、男女平等、性差別の撤廃、そして性的暴力に対して厳罰で臨む方針を発表して、拍手喝采を浴びている。
「自由、平等、博愛」の国是にもかかわらず、また「愛の国、恋の国」というロマンチックな呼び名とは裏腹に、フランスではなんと3日に1人のペースで、女性がレイプや家庭内暴力などの「性差別」が主因で死亡している。
「国家的恥辱だ」。フランスで多数の女性が性差別の被害者になっていることについて、マクロン大統領は強い言葉を使って糾弾した。わざわざ11月25日の土曜日に、各種団体に所属する約200人の検事をエリゼ宮(仏大統領府)まで呼び寄せ、性差別の撤廃に関する具体的な方針を発表したときのことだ。この会議の冒頭では、昨年1年間に性的暴力などで死亡した123人の女性被害者のために、1分間の黙禱(もくとう)も捧げた。
知人の結婚式のパーティーに両親と出席した9歳の少女が行方不明になった事件や、ジョギング中に行方不明になった29歳の女性が黒焦げの状態の遺体で発見されるショッキングな事件など、フランスでは今年も女性が被害者になる事件が相次いでいる。両事件とも捜査は難航していたが、前者の少女の行方不明事件については発生から3カ月後の11月30日、所轄のグルノーブル(フランス東南部)の共和国裁判所の判事が、重要参考人として拘留して事情聴取をおこなっていた元軍属の男(34)に対し、「殺人容疑」で本格的な取り調べを開始すると述べた。
そのほか、世間の耳目を集めた事件として、中学校の31歳の数学教師が、教え子である14歳の少女と性的関係を持ったというものもあった。ただ、この事件では、少女に教師と関係を結ぶことへの同意があったとされ、「レイプ」ではなく、「愛の行為」と認定されて、刑事裁判にはならなかった。
フランスでは、「レイプ」は「虐待」の罪も加わって厳罰に処せられる。とりわけ、相手が15歳以下の未成年の場合には、20年の実刑に科せられるケースもある。ところが、さすが「恋愛の国・フランス」で、相手の同意があった「愛の行為」となると、年齢の制限はなし。つまり、相手が15歳以下であっても、刑法上の処罰の対象にはならない。
この少女は警察による2回の取り調べのなかで、2月にインターネットなどで教師と会話するようになったこと、教師とは数学を教わったこともあり、6月に性的関係を結んだことを認めた。母親は、少女が教師の甘い言葉などに「操られた結果」であり、本人の自由意思ではなかったと主張したが認められず、結局、「レイプ」での告訴をあきらめ、転校などを余儀なくさせられたとして、民事で争うことにした。一方、少女の義理の父親は、この教師を無理やり警察署に引っ張って行って突き出したが、この行為が「暴力行為」と認定され、刑事事件の被告となるという、笑えない話もある。
マクロン大統領はエリゼ宮での集会でこの事件を念頭に、「11歳の少女が同意したとして、成人男子と性的行為を持ったとき、許すことができるだろうか。現行の刑法では認められている、この許しがたい曖昧(あいまい)性を終わりにすべきだ」と指摘。15歳以下の未成年との性行為は、同意の有無にかかわらず、「犯罪とする法案を来春、提出する」と述べた。大統領のこの発言に対し、会場にいた200人の検事たちからいっせいに拍手がわき上がり、喝采が何分間も続いた。法曹界では、この事件の理不尽性をめぐって論議が噴出していたからだ。
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