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木造船の内部から機器を運び出す捜査員や関係者=9日午前9時41分、北海道函館市拡大北朝鮮から漂着した木造船=北海道函館市、撮影・朝日新聞社

12月5日(火) 午前10時から局で『報道特集』の定例会議。午後1時から中東取材打ち合わせ。全幅の信頼を寄せているEさん、Nさん、Tさんらと。

 夜、両国のシアターX(かい)で勅使川原三郎のダンス・パフォーマンス。アルチュール・ランボーの『イリュミナシオン―ランボーの瞬(またた)き―』とのタイトルのダンス。痙攣的な美。暗黒舞踏とも欧米発のコンテンポラリー・ダンスとも異なる独自の勅使川原ワールドだが、これがなぜランボーを銘打たなければならないのかがわからない。角打ちワインの店でそう思った。

青森上空から羽田へ引き返し、慌てて千歳へ……

12月6日(水) 「毎日新聞」のコラム記事を書いていたら、今週のネタで北朝鮮からの漂着船を取材することになり、急遽函館へ。明日の朝、松前港から出る漁船で、彼らが「上陸」したという無人島・松前小島に僕らも「上陸」する予定。急いで帰宅して防寒着を用意する。

 こういう急いでいて余裕を失った時に限って大事なことが起きる。沖縄密約訴訟原告団の飯田弁護士からのメールで原寿雄さん死去の一報を知る。何と。一瞬言葉を失う。人はやはり必ず死ぬのだ。けれども突然にやってくる死は僕らを狼狽させる。生命の営みという重さ。原さんからいただいたものは大きすぎて、ここに簡略には書けない。まいった。

 羽田空港でRディレクターら取材クルーとドッキング。函館空港に向かったが、17時45分に羽田を飛び立ったはいいが、雪による悪天候で着陸できない場合は羽田に引き返すという条件付きだと告げられる。函館空港の降雪が酷く、滑走路の除雪作業を必死でやっているという。青森上空にさしかかったところで機長から「今、滑走路の除雪作業を続行中なのでしばらく旋回しています」と告げられる。まあ大丈夫だろうと高をくくっていたら、30分ほどしてから、これ以上は燃料がないので引き返す旨を告げられる。がーん。まいった。

 羽田に引き返し到着したのが、もう20時30分を過ぎていた。Rディレクターと相談、今日中に北海道内に向かわないと「上陸」取材は断念しなければならない。それで慌てて21時05分発の札幌千歳空港行きの便に急遽飛び乗ることにする。それだと千歳到着が夜の22時40分。夜を徹して陸路で函館へ向かえば何とか間に合う計算だ。Mカメラマンらとともに徹夜を覚悟せざるを得ない。

 千歳空港に着く。さいわい雪は降っていない。だが空港内はすでに店舗がすべて閉店していて、僕らが何も食べていないことに気づく。これはヤバイということで、とにかく腹ごしらえをすることに。ところが空港近辺はほとんどこの時間、どこも何もやっていないのだった。タクシーの運転手さんに教えてもらいながら、近所の居酒屋さんでご飯ものを食べて何とかしのぐ。それから函館までの車で陸路の強行軍。朝方の6時には着くはずだ。20分ほど狭いタクシーの中でうとうとしたようなしないような。漁船が出るという港らしき場所に到着した時にはすっかり朝になっていた。

持たざる者は持つものから取る

12月7日(木) 日にちの境目がないまま陸路で松前港まで移動してきた。途中何回か、トイレでコンビニに寄る。慌てて自宅を出てきたので帽子を持ってくるのを忘れたことに気づく。それでセブン―イレブンで売っていた300円の毛糸の帽子を買う。無人島・松前小島の管理を委託されている漁師・吉田修策さん(67)の漁船に乗って午前7時半出航。同じTBSの夕方のニュース「Nスタ」取材チーム、それに読売新聞の新人女性記者一人とともにイカ釣り漁船に乗り込む。あとここには書けないが「当局者」が2人同乗。 ・・・ログインして読む
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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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