メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

沖縄との溝―本土日本人は植民地主義と決別を

決定的に欠ける「当事者意識」。「辺野古」は植民地主義や差別の象徴

新垣毅 琉球新報社東京報道部長

宜野湾市立普天間第二小学校の校庭に落下した米軍ヘリコプターの窓=市提供 20171213拡大宜野湾市立普天間第二小学校の校庭に落下した米軍ヘリコプターの窓=2017年12月13日、市提供

「第二の加害者」

 2016年4月、元在沖海兵隊員の男が沖縄本島中部に住む20歳の女性を暴行・殺害する事件が起きた。那覇地裁は2017年12月、この男に求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

 事件から2カ月後、事件に抗議する県民大会で、当時名桜大4年の玉城愛さん=当時21歳=は、安倍晋三首相と本土に住む日本国民を名指しし「今回の事件の『第二の加害者』は、あなたたちだ」と涙ながらに訴えた。

 本土では、この発言に波紋が広がった。「私は関係ないのになぜ加害者なの?」「本土にも米軍基地があることを知らないのか」「沖縄と本土を分断する気か」「沖縄は独立した方がいい」などの批判がネットで目立った。ここに引用できないほど卑劣な言葉もあふれた。

 こうした批判や攻撃を浴びせる人たちの言葉に共通しているのは、本土の沖縄に対する責任への無自覚である。沖縄の米軍基地問題は「沖縄問題」であり、本来は本土の問題ではないという意識だ。それに基づく視線からすると、米軍基地を批判する沖縄の人々は「わがまま言うな」となり、同情的な人からは「かわいそう」となる。どちらも根っこは同じで、責任を負うべき当事者としての自覚を決定的に欠いている。

 ここに本土と沖縄の大きな溝がある。

 事件を受けて、琉球新報と沖縄テレビが沖縄県民を対象に実施した世論調査では、在日米軍基地の駐留を定める日米安保条約について、全国とは異なる傾向が表れた。

 調査の結果、現行の日米安保条約を「平和友好条約に改めるべきだ」が最も多く、42%に上った。「破棄すべきだ」の19%が2番目に多かった。次も「多国間安保条約に改めるべきだ」の17%で、現在の日米安保条約を「維持すべきだ」はわずか12%しかない。

 共同通信などの全国世論調査では、日米安保条約と日米同盟について、「維持」や「強化」の合計は8~9割に達する。沖縄県民の世論とはあまりにも対照的だ。

 日米安保や日米同盟の維持・強化は、在日米軍基地の維持・強化を意味する。すなわち、基地を今の規模のまま置き続けるか、あるいはもっと基地を増やすか軍事機能を強化するかのいずれかだ。

 平和友好条約と安保条約の違いは、外国の軍隊を置くか置かないか。基地負担の大きい沖縄では、現行安保条約をやめるよう8割の人が切望しているのに対し、本土側は、沖縄に基地を集中させたまま、基地の維持・強化を9割近くが望んでいるのである。

 日本が安保条約を結んだ時、沖縄は米国の統治下にあった。日本の国会に沖縄の代表者は送れておらず、条約締結の意思決定に参加していない。その意味で沖縄は、安保条約の結果責任を負う立場にない。それどころか、住民の猛反発の中、米軍は銃剣とブルドーザーで強制的に土地を奪い、基地を建設したのである。1972年に沖縄が日本に復帰する際は、沖縄の米軍基地撤去を求めた。しかし、復帰後も、安保条約締結の結果である米軍基地を押し付けられ続けている。

沖縄に集中するリスク

 国土面積全体の0・6%にすぎない沖縄に全国の米軍専用施設の約7割が集中している。ということは、米軍機墜落や殺人・暴行などの事件・事故というリスクも偏在する。これは平時のリスクである。有事においては、敵国から真っ先に標的にされる。現在はミサイル戦争の時代である。戦争や紛争が勃発すれば、攻撃される可能性が高い。そうなれば、沖縄島の再起は絶望的になる恐れすらある。

 「米軍専用施設」が集中しているということは、憲法や国内法より事実上、上位と指摘されている日米地位協定の不平等性も集中していることを意味する。

 2017年12月、沖縄県宜野湾市の保育園で米軍CH53大型輸送ヘリコプターが落としたと見られる落下物が見つかった。大きな落下音を聞いた当時、幼児・職員が屋根の下にいた。落下地点は園庭から50センチしか離れていなかった。さらに12月13日には同市の普天間第二小学校の運動場に、普天間所属のCH53E大型輸送ヘリの窓が落下し、4年生の男児1人の左腕に石が当たり、打撲症を負った。当時運動場にいた約60人の児童から十数メートルしか離れていなかった。

 ところが米軍は、県の飛行中止要求を無視して事故から間もなく同型機の飛行再開を強行し、日本政府はそれを追認している。翁長雄志沖縄県知事は「日本政府は当事者能力がない」と批判している。

 このような安保の負の側面であるリスクを沖縄に集中させる一方、本土の人々は米軍による「安全保障」という利益を享受しているのである。安保に賛成・支持しているというのなら、本来、そのリスクも負担するのが筋である。安保に否定的な意見が多い沖縄に負担を集中させておきながら、新たな施設を造るという構図は、多くの沖縄県民にとって差別に映る。

放置される沖縄ヘイト

 ところが差別の解消どころか、米軍集中という物理的差別に加え、沖縄ヘイトがまん延している。 ・・・ログインして読む
(残り:約2518文字/本文:約4549文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

新垣毅

新垣毅(あらかき・つよし) 琉球新報社東京報道部長

1971年生まれ。沖縄県那覇市出身。著書に『沖縄の自己決定権――その歴史的根拠と近未来の展望』(高文研、2015年)、『続 沖縄の自己決定権 沖縄のアイデンティティ――「うちなーんちゅ」とは何者か』(高文研、2017年)