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[28]韓国に怒る人を説得できるのは安倍氏だけ

慰安婦「日韓合意」の誠実な履行のために

伊東順子 フリーライター・翻訳業

韓国大統領府で元慰安婦らと懇談した文在寅大統領(中央)=韓国大統領府提供20180104拡大韓国大統領府で元慰安婦と懇談した文在寅大統領(中央)=2018年1月4日、韓国大統領府提供

日韓は何を約束したのか?

 1月9日には韓国の康京和外相から、翌10日は文在寅大統領から、「慰安婦問題」についての言及があった。それに対して安倍首相は、「日本側は、約束したことはすべて誠意をもって実行している。韓国側にも実行するよう強く求め続けていきたい」と述べたという。

 一連の動きは韓国でも報道されたが、人々の関心は高いとはいえない。文在寅大統領の年頭の挨拶でも、注目が集まったのは雇用や福祉の問題。日常の会話でも、従軍慰安婦問題が話題にのぼることはほとんどない。

 ところが日本に来たら、興奮気味に語る人が多くて驚いた。テレビ、新聞、インターネットはもちろん、故郷の新年会の席でも「韓国はどうなっているんだ!」と私が怒られた。

 「合意は国と国との約束だ。それを破るとはけしからん」

 いきなり言われたので、逆に聞き返してみた。

 「ところで、合意の内容はなんですか? 何を韓国が破ったんですか?」

 「蒸し返さないということだ」

 「それが合意の内容ですか?」

 「そうだ、同じことを何回も言うのは、合意違反だ」

 この人(60代男性)だけでなく、テレビでもこんな論調をよく聞いた。

 でも、合意内容とは、それだけだろうか。「合意」には、まずは日本政府が「責任を痛感」し、「心からおわびと反省」をするとある。そのことを言うと、不思議な反応をする人々がいる。

 「日本だけが反省するのはおかしい。慰安婦の募集には韓国人も関与した」。さらには「本当は慰安婦なんかいなかった、みんな売春婦だったのだ」という発言までとびだす。

「元慰安婦の方々の名誉と尊厳」を回復すること

 政府間の「合意」が守られるべきということに、異論はない。そこで重要なのは、合意の内容である。2015年の12月28日、岸田文雄外相は尹炳世(ユン・ビョンセ)外相との会談後の共同記者会見で、次のような内容の声明文を読み上げたのだ。

ア 慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から日本政府は責任を痛感しています。安倍内閣総理大臣は、日本の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒し難い傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

 その上で、次の内容が続く。

イ 具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

 そして最後に「不可逆的に解決」という確認がされている。

ウ 日本政府は上記を表明するとともに、上記(イ)の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。

 つまり、「不可逆的に解決」の前提として、日本政府の「おわびと反省」があり、日韓政府が協力して「元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行う」ことが「合意」されているのだ。

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筆者

伊東順子

伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業

愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。

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