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フランス政界の#MeToo、マクロンの見解

“看板閣僚”のセクハラ問題をめぐる週刊誌報道を「行き過ぎだ」と批判

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

懇親会で待ち受けていたものは

エリゼ宮(仏大統領府)担当の内外記者との懇親したマクロン大統領(右)=2018年2月13日エリゼ宮(仏大統領府)担当の内外記者との懇親したマクロン大統領(右)=2018年2月13日

 エマニュエル・マクロン仏大統領が、閣僚2人のセクハラ問題に関する週刊誌報道を「共和国に対する嫌疑」と指摘、行き過ぎた報道だと牽制(けんせい)した。

 メディアへの警告?ともとれるこの発言が飛び出したのは、2月13日にエリゼ宮(仏大統領府)担当の主要内外記者との懇親会だ。もともとメディア好きだったフランソワ・オランド前大統領時代に始まったもので、年に1回、パリ7区の理数科系のエリート校、理工科学院(ポリテクニック)の卒業生クラブで夕食会のかたちで行われていた(会費制)。

 今回は前任者との“相違”を強調するためか、パリ8区の大展示場グラン・パレの付属建物ミニ・パレで開催され、夕食会ではなく「カクテルパーティー」だった。記者の間をまわって握手したり、自撮りに付き合ったりしたオランドと違い、マクロンが記者と親しく接する機会もなく、通常の記者会見とほとんど変わらなかった。記者会見と異なるのは、机上に飲料水が並んだこととテレビ・カメラが禁止されたことぐらい。

 実はマクロン大統領との懇親会は昨年秋に企画されたのだが、2回延期になり、今回は三度目の正直。しかも予定より30分遅れで到着した大統領を待ち構えていたのは、「2人の閣僚のセクハラ事件」という悩ましい問題だった。

渦中のユロは“看板閣僚”

 「辞任すべし」と、ソーシャルメディアや女性団体などから批判を浴びているのは、国務相(副首相格)兼任のニコラ・ユロ環境連帯移行相(64)とジェラール・ダルマナン行動・公会計相(35)だ。特にユロは閣僚中、最も高い50%前後の支持率を誇る“看板閣僚”だけに、辞任するとなると、マクロン政権を揺るがしかねない。大統領もエデュアール・フィリップ首相も事件が報道された直後、2人の支持を表明した。

 ユロの「レイプ事件」を報じたのは、今年1月に創刊したばかりの週刊誌「エブド」だ。2月9日発行の第5号で、1997年にユロが有名政治家一族の女性をレイプし、2008年にこの女性が告訴したという内容を報じた。97年、女性は20歳。将来のことなどを考えて告訴しなかったが、約10年後の2008年に告訴に踏み切ったとも。

 「事件」当時、ユロは環境ルポ番組「ウシュワイヤ(アルゼンチンの秘境名所)」(民放テレビTF1で1988~2012年に年3~4回放映)の制作者兼出演者として人気絶頂だった。人気者の地位を利用してのレイプというわけだ。

ミッテラン元大統領の孫が告訴

 ユロは、2007年の大統領選でニコラ・サルコジ(右派政党・国民運動=UMP、共和党=LRの前身)とセゴネール・ロワイヤル(社会党)が争った際、大統領候補の“第3の男”として浮上。結局、出馬はしなかったが、サルコジら有力候補者と、当選したら「環境相を内閣NO2にする」などの環境重視政策を公約させた「環境協定」を結び、政界入りも囁(ささや)かれていた。政治家一族の女性が08年に告訴に踏み切ったのは、「セクハラ・レイプ男」の政界入りを阻止したかったのだろう。このときユロは疑惑を全面否定、証拠不十分などで不起訴になっている。

 「エブド」はこの女性を匿名で報じたが、パリジャン紙が故フランソワ・ミッテラン元大統領の孫で、元大統領の次男のジャーナリスト、ジルベール・ミッテランの娘のパスカル・ミッテランとすっぱ抜き、騒ぎに拍車がかかった。

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