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[84]アメリカはまだまだ「新世界」だ

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018」の公式サイトより

5月1日(火) 午前の定例会議は欠席。アメリカ取材の準備。ロサンゼルス、ワシントン、ニューヨークとの連絡は時差がともない、いろいろと困難がともなうが思わぬ進展もあった。

 その後、都内のプールで短時間だが泳ぐ。最近は泳がないと調子が悪くなるほどだ。Nさんと打ち合わせ。午後4時過ぎからアメリカ取材打ち合わせ。その後、渋谷で放送法関連の勉強会。放送法4条の撤廃案が突如浮上してきた背景と、そのことの意味の重大さを放送業界がどこまで真摯に受け止めているかをめぐって、当の放送局員の意識が著しく低いとの指摘を受ける。夜遅く、講談社のIさんと久しぶりに新宿のN。

今やるべきことは何か

5月2日(水) 朝早くプールへ出かけてがっつりと泳ぐ。アメリカ取材の準備。米朝首脳会談のゆくえに注目が集まっている。会談の開催日時と場所が憶測を呼んでいる。朝鮮半島をめぐるものごとの進展の速度が加速しているように思う。

 企業社会には人事異動の季節というものがある。サラリーマン組織の常だが、自分の働き場所を決められてしまうという意味では、他人事ではないから関心が高いのだが、いろいろな人事情報が飛び交っていて、知らなくてもいいことを知ってしまう。虚しい気持ちになる。

 夕方、四谷の小さな店で某氏と会食していたら、昔テレビにもよく出ていたある国会議員が同じ店にいた。四谷3丁目で1969年からやっている「カデンツア」という店がある。そこがもしかして閉店するかもしれないということを知って某氏とともに顔を出す。「あら、お久しぶりね」とママさんは微笑んだ。この店にはさまざまな濃密な思い出が詰まっている。先に亡くなった藤原亙さんや、大先輩の鈴木恭さん、小笠原貞利さん、料治直矢さんらが訪れていた。みんなみんな亡くなっていった人々だ。「時は流れひとはまた去る 思い出だけを残して」(江戸アケミ)。しかし、今やるべきことは何か。自分に問いかける。亙さんたちが生きていて、今の報道のありようをみたら何を言うだろうか。

ラ・フォル・ジュルネで音楽漬け

5月3日(木) 「沖縄タイムス」の原稿。憲法記念日に書くので、沖縄と憲法というテーマに絞った。

 世の中はゴールデンウィークだ。完全にお休みモードなので、毎年恒例のラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018へと足を運ぶ。今年から有楽町の東京国際フォーラムに加えて、池袋の東京芸術劇場との2か所同時開催という形に変更された。有楽町と池袋では地下鉄有楽町線に乗って20分だが、歩いたり待ち合わせの時間も考えると40分くらい見ておかなければならない。

 今年のテーマは「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」。何らかの理由で生まれ育った故郷を離れ、遠く離れた場所への移住、亡命、放浪、漂流を余儀なくされた人々が作り上げた、そして聞き続けた音楽。ショパン、ラフマニノフ、ストラヴィンスキー、バルトーク、ドヴォルザーク……最初にみたYomというクレズマーの影響の濃いクラリネット奏者とQuatuor IXIという弦楽カルテットの「イルミナシオン」という曲がものすごかった。現代音楽、東欧クレズマー、中東の楽曲などが混在する魅力溢れるステージ。これは初めから大当たりだったぞ。そのあと定番のボリス・ベレゾフスキーのソロピアノ。スクリャービンとラフマニノフ。

 その後、局でアメリカ出張関係の雑務等を終えた後、午後10時から池袋へ移動して、「渋さ知らズ」の締めのコンサートを聴く。これがチケットが最前列のど真ん中。こんないい席で「渋さ」をみるのは初めての経験だ。チケットを早めに買ってくれた若い衆に感謝。あんまりにも席がステージに近すぎて、ダンサーたちが目の前で乱舞するものだからまいった。テーマはドボルザークの『新世界から』を大胆にアレンジして『別世界から』だ。そう言えば、アメリカという国は、

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