2018年06月21日
6月5日(火) 「報道特集」の定例会議の後、知人から薦められていた韓国映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』をみる。1980年の韓国・光州事件をテーマにした映画が、何と言うかエンターテインメントとして立派に成立しているではないか。驚いた。映画は光州事件の現場取材に入ったドイツ公共テレビARDの東京特派員ユルゲン・ヒンツペーター記者を空港から光州まで乗せ、取材を助け、命がけで脱出したタクシー運転手「キム・サボク」(仮名)の実話に基づく。光州事件は、全斗煥による軍事クーデターと戒厳令の敷設で金大中らを一斉逮捕したことをきっかけに全羅南道・光州で起きた大規模民衆蜂起である。軍による武力制圧で夥しい数の死傷者が出た韓国・現代史の最暗部のひとつだ。これを映画化することには相当の覚悟が必要なのではないかと想像できる。ちょうど日本で連合赤軍事件を故・若松孝二が映画化したように。
光州事件は僕がTBSというテレビ局に入社して仕事を始めた3年目に起きた事件で、当時のことを鮮烈に記憶している。当時、外信部はこの事件の報道で輝かしい仕事ぶりでフル稼働していたことをまざまざと思い出す。「報道のTBS」が健在だった頃のことだ。ここでは詳述できないが、光州事件の現場映像を「秘密の方法」で入手し東京まで搬入、おそらく最初の映像報道をしたのはTBS外信部だったと思う。今は故人となったHさんという人の動きが大変なものだったと記憶している。
夜、東京都写真美術館の元キュレーター笠原美智子さんの「卒業」祝いの会。シャビに笠原あり、ということで僕がシャビに通い続けた理由のひとつでもあった。笠原さんは新しい職場(ブリヂストン美術館)に移られて、すこぶる元気。楽しい会だった。
6月6日(水) 早朝から新潟県上越市へ移動。接戦が伝えられている県知事選挙の取材だ。僕は政権与党の自公推薦の元海上保安庁次長・花角英世候補の取材が担当だ。上越市の街頭演説場所は地元建築資材メーカーの工場前で、建物の窓には花角候補のポスターががんがん貼られていた。いわゆる企業ぐるみの徹底した組織選挙である。本人が選挙カーに乗って到着すると、仕事着姿の聴衆がパチパチと拍手をする。まるで企業の朝礼みたいな感じもしないではない。上越市長や自民党の県会議員らが駆けつけていた。花角氏本人はソフトな第一印象。一応、原発再稼働についても慎重な姿勢であることをアピールしているが、実際はどうなのか。まあ大きな意味では争点の曖昧化なのかもしれない。
自民党・二階幹事長が来県して福島江で地元有力者らと会い、隠密行動風に組織固めの仕上げをしているさまを取材したのちに、魚沼市と小千谷市の2か所での立ち合い演説会を取材。東京からの応援弁士議員の演説の中身が聞くに耐えないレベルのもの
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