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[92]現実以上にリアル。ザ・空気ver.2

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

二兎社「ザ・空気ver.2」二兎社『ザ・空気ver.2』。安田成美(左)と眞島秀和=本間伸彦氏撮影

6月26日(火) 午前10時から「報道特集」定例会議。今週、沖縄について特集で扱うことになり、追加取材のためのカメラや車、宿の手配などが必要になる。この時期はホテルを押さえるのが難しい。つまり観光客がどっと沖縄に押し寄せているのだ。今回の取材の趣旨=米朝会談によって在沖米軍基地はどのような影響を被るか、から考えると、米海軍陸軍共用の基地ホワイト・ビーチの取材ができれば意味があるのだが。ここは原子力潜水艦が入港できる施設で、朝鮮戦争の時以来、国連軍の受け入れ施設にもなっているから。

 午後、楽しみにしていた二兎社の『ザ・空気ver.2』をみる。永井愛さんの前作『ザ・空気』はとても面白く拝見していたので、今回もかなり期待していた。その期待以上に、前作にも増して面白いことと言ったら! でも本当は、ここで笑い転げている場合ではないのだ。ストーリーは日本型記者クラブ制度をめぐる実話エピソードに基づいている。このあたり永井さんは実によく取材をなさっている。題材となっているのは、首相記者会見「指南書」コピー機置き忘れ事件、国会記者会館屋上スペースのフリーランス記者使用問題などだ。

 「指南書」コピー機置き忘れ事件はよく覚えている。2000年5月のことだ。当時、僕は『筑紫哲也NEWS23』のデスクをしていた。いわゆる「神の国」発言で窮地に立っていた森喜朗首相が記者会見に臨むにあたって、記者の立場から懇切丁寧なアドバイスを指南しているペーパーを内閣記者会の記者が共用コピー機のところでみつけた。発見したのは地方紙の記者だった。彼は、ペーパーの内容から判断して記者会加盟の記者が書いたもので問題だと感じ、その事実を後日報じた。『明日の記者会見に関する私見』と題されたそのペーパーを僕もみたが、恥辱を通り越して悲しくなった記憶がある。その文章を書いたのは、当時僕らもかなり詳しく調べたところ、筆者は

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