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安田純平さんが現れた

「忘れないで」の記事から5日後、テレビ画面に現れたのは間違いなく本人だった

石川智也 朝日新聞記者

 動画はシリア人男性のフェイスブックにも投稿された。この男性は、2016年3月にも安田さんが映る1分余りの動画をネットに投稿した人物だ。このときと同様、安田さんを拘束している武装組織「シリア解放機構」(旧ヌスラ戦線)の交渉仲介者から入手したとしている。男性は当初、動画を渡すには多額の対価が必要としていたが、間もなく日本のメディアにも無償で提供した。

 今回の動画の長さは52秒。撮影日は「2017年10月17日」と安田さん自身が動画の中で語っている。その表情はやつれ、憔悴し、シリアに発つ直前に私が酒を酌み交わしたときの彼と比べて白髪も増えている。日焼けし精悍だった顔色も青白く見え、屋内で軟禁状態にあることを想像させる。日テレは、シリア解放機構に接触した人物が「安田さんの健康状態は非常に悪い」と話している、と報じた。

 17日夜には時事通信が、さらに別の安田さんの「新映像」が存在すると報じ、ギンガムチェックシャツ姿の安田さんの静止画を流した。「関係者」から提供された15秒程度の動画の一部だという。詳しい内容や撮影場所は不明だが、「今年6月撮影」としている。

 翌日には読売新聞も「シリアの反体制組織の関係者の男性」の話として、6月中旬撮影の新たな映像が存在すると報じた。この記事はテキストのみだが、男性によれば映像は約15秒間で、安田さんは家族に「会いたい」「助けてほしい」などと話しているという。安田さんはすでに旧ヌスラ戦線から別の組織に引き渡され、健康状態が悪い、という注目すべき情報も含まれていた。

 時事通信が配信した画像を見る限りでは、昨年10月撮影とされる動画と比べても、さらにやつれた様子がうかがえる。「健康状態が悪い」がもし本当だとすれば、人質の体調不良は拘束グループにとって解放交渉を急ぐ理由になり得る。とすれば、今回のような動きが続く可能性もある。

 ただ、これらの情報は、日本政府や家族との身代金交渉を進めたい武装組織側の偽装の可能性もあり、予断は持てない(かつてフィリピンで三井物産マニラ支店長の誘拐・身代金要求事件が起き、支店長の中指が切断されたような写真や、か細い声を録音したテープなどが報道機関に送りつけられたことがあったが、後に犯人グループの偽装と判明している)。

 いずれにせよ、今回の動画や映像は、2015年に「イスラム国」(IS)が後藤健二さんと湯川遥菜さんを拘束した際のものとは異なり、シリア解放機構の公式の動画ではない。身代金や解放の条件にも触れていない。旧ヌスラ戦線は表向きには誘拐ビジネスには関わっていないとの立場をとってきたが、実際には代理人を使って身代金交渉をしているとされる。また、ISと違って拘束した人質を殺害したことはないとされている。

拡大邦人人質事件についての関係閣僚会議で発言する安倍首相(右から3人目)=2015年1月21日、首相官邸

安倍政権「テロリストと交渉しない」

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。岐阜総局などを経て社会部でメディアや教育、原発などを担当。2018年4月から特別報道部記者。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学感染症情報分析センターIDIA客員研究員。共著に「それでも日本人は原発を選んだ」(朝日新聞出版)等

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