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“地に堕ちたジュピター”マクロンの復活はあるか

フランスのW杯優勝も支持率アップにつながらず。ガードマンの傷害事件で暗雲

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

 事態を重視した野党は、マクロン政権の目玉、行政権強化を目指す憲法改正に関する審議を中断。調査委員会にコロン内相や官房長を呼んで説明を聞くなど、事件が紛糾するなか、肝心の大統領は沈黙を守ったままだった。

 24日夜にやっと、訪問先の仏南部オート・ピレネー地方でおこなわれた与党議員や地元の地方議員など約20人が出席した夕食会で、「すべての責任は私にある」と言明。そのうえで、メディアが伝えるベナラの「高給説」や、国家提供の豪華パート住まいなどを「誤報」と断言。「愛人でもない」と笑いも取るなどの余裕も示して、反撃を開始した。

 ベナラ自身も26日発行の「ルモンド」の長時間インタビューを受けたり、テレビに出演したりして、デモ隊員の過激な行為を強調し、自分の行為を正当化した。ただ、大統領のガードマンとしての立場を忘れた点などに関しては、「大きな間違いを犯した」とも述べた。

 監視カメラのテープのコピーを要求した件については、求めてもいないのに届けられたと説明し、「陰謀」の可能性もにおわせた。火元の同紙とのインタビューに関しては、「沈静化」「一種の手打ち」との見方もある。

W杯優勝で支持率が上がったシラク大統領

 W杯でフランスが優勝すれば、時の大統領に追い風が吹く。1998年にフランスが優勝した際には、シラク大統領の支持率が急上昇している。

 当時、シラク大統領の支持率は低迷していた。前年の1997年の繰り上げ総選挙で社会党が勝利し、右派政党出身のシラクのもとに、社会党のジョスパン第一書記が首相に就任するという「保革共存政権」が誕生。大統領の権限も狭められるなど、苦しい状況に追い込まれていた。

 もともと98年に実施する予定だった総選挙を繰り上げたのは、同年のユーロ参加国決定を前に、ユーロ参加を目指して強行していた緊縮財政実施で国民の不興を買っていたので、ユーロを選挙の争点にしたくないとの思惑が働いたからだ。

サッカーを観戦したことがなかったシラク

 実はシラクは当時のエリート階級がそうであったようにラグビーのファンで、サッカーの試合は観戦したことがなかった。サッカーは貧困層、下級階級のスポーツと見られており、代表選手の華であるジダンがアルジェリア出身であるように、移民2世が多かったので、「彼らが正しい仏語を話したので驚いた」と影で告白したフランス人もいたほどだ。

 そのため、このときの優勝は、フランスの移民政策、同化政策の成功の象徴ともされた。

 ちなみに、今回の代表選手にも移民2世が多い。クロアチアとの決勝戦(4-2)で3点目を上げたポグバも、4点目を上げたエース番号「10」を背負ったムバッペも、移民2世だ。2点目をあげたグリーズマンも名前からも察せられるようにドイツ系。(1点目はクロアチアのオウンゴール)。彼らは「共和国万歳!」(ポグバ)、「フランス人であることを誇る」(グリーズマン)などコメントも優等生的だ。付け加えれば、19歳のムベッパは大学入学資格試験(バカロレア)の合格者。本物の優等生だ。

W杯準決勝を観戦するベルギーのフィリップ国王(左)とマクロン仏大統領=2018年7月10日、サンクトペテルブルク競技場拡大W杯準決勝を観戦するベルギーのフィリップ国王(左)とマクロン仏大統領=2018年7月10日、サンクトペテルブルク競技場

期待した支持率アップはなく

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト

元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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