鈴木洋仁(すずき・ひろひと) 東洋大学研究助手
1980年東京都生まれ。2004年京都大学総合人間学部卒業後、関西テレビ放送入社。その後、ドワンゴ、国際交流基金、東京大学特任助教を経て現職。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(社会情報学)。専門は社会学。著書に『「元号」と戦後日本』(青土社)、『「平成」論』(青弓社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「平和」を強調する「戦後」の重み。最後まで明確な像を結ばない「平成」
より正確に言えば、象徴するように感じているのは、あくまでも、この30年間にわたって災害を大きく報じ続けたメディアだ。繰り返すように、被災者にとっては、過去の災害と比べて「平成最悪」だとしても、何の意味もないからだ。
確かに、オウム真理教による地下鉄サリン事件の2ヶ月前に起きた阪神・淡路大震災(平成7年)や東日本大震災(平成23年)に代表されるように、「平成」の30年間は大災害が続いた。そして、メディアが大災害を大々的に報じた。
くわえて、その被災地には、必ずといっていいほど、天皇皇后両陛下がお見舞いに訪れた。その天皇が来年、退位される前、最後の夏に大きな災害が起きる。これは確かに、「平成に入って最悪の被害」という形容詞を使いたくなる象徴的な出来事にほからない。
だが、オウムと災害という二つの出来事が、いかにこの「平成」を象徴していたとしても、それでもなおこの時代は、中途半端に終わらざるを得ない兆候もまた、同時に見えている。
日経新聞は8月3日の夕刊に「「元年ベビー」ブーム到来?」との見出しで、「来年5月に平成が終わり、新しい元号が始まる。新元号の元年中に子供を授かろうと『元年ベビー』への関心が高まっている」と報じている。
「通常、元号の切り替え時期は予測できない。だが来年は運任せではなく、狙って行動できる絶好のチャンス」であること。また、第一生命経済研究所の首席エコノミスト、熊野英生さんのコメントとして、今回は崩御ではなく服喪の必要がないため、「マイナス要素は全くない」と記す。何ともグロテスクな話ではないか。
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