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地方創生が日本を壊す?

なぜ出生力回復が目指せなくなったのか? 地方創生の失敗どころではない深刻な事態

山下祐介 首都大学東京教授

拡大「まち・ひと・しごと創生本部事務局」の看板を掲げる(左から)石破茂地方創生相、安倍晋三首相、菅義偉官房長官=2014年9月5日、東京都千代田区、代表撮影

 国を方向付ける政策が、その目的と手段を違えているのは大変不幸なことである。

 平成26年9月に始まった地方創生。すでにもう4年が経とうとしているが、この地方創生がまさにそれだ。

 「まち・ひと・しごと創生本部」が立ちあがったのは、日本の止まらない人口減少に立ち向かうためだった。そしてもっとも出生力の低い東京に若い人々が集まっているのを問題視して、東京一極集中を阻止する――地方創生とはそういうものだった。地方を変え、東京を変え、まち・ひと・しごとの好循環により、日本の出生力の回復を目指すものになるはずだった。

 だが、いまや地方創生は、地方の仕事づくり事業になってしまっている。地方で人口が減るのは仕事がないからだ。地方は「稼ぐ力」を付けよと。そういうことになってしまっている。

 あるいはまた、地方移住が地方創生の代名詞のようにもなっている。

 しかし移住で人口は増えない。転入のあった地域の人口は増えても、転出地の人口は減るから、日本全体の人口は変わらない。現在の政府の地方創生政策は間違っている。

過去最少の出生数

 地方創生政策の検証は、その目的が出生力の回復である以上、出生数や出生率によってなされることになる。

 ところが、その出生数の縮小がますます止まらなくなっている。地方創生によって回復するどころか、事態はより悪化しているようだ。

 この7月に総務省が発表した数値によれば、平成29年の出生数は平成28年に引き続いて100万人を割り込み、過去最少を記録した。死亡数が出生数を上回る自然減も、過去最多の39万人となっている。

 さらに見逃せないのが出生率である。1人あたりの女性が産む子どもの数を示すのが期間合計特出生率だが、この数値に関していえば、平成17年の1.26を底として近年はずっと回復傾向にあった(下図参照)。ところが、平成26年に地方創生が始まって以来、平成28年、平成29年と再び低下がはじまっているのである。

 私たちの社会はどこかで何かを感じながら、自然に再生をはじめていた。合計特殊出生率の上昇はそうした変化の胎動を示すものだった。だがそうした出生力の回復を、もしかしたら地方創生事業自身が損ねてしまったのかもしれないのである。

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※内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/data/shusshou.html)より

消えた「人口減少をとめる」という政府目標

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筆者

山下祐介

山下祐介(やました・ゆうすけ) 首都大学東京教授

1969年生まれ。九州大学助手、弘前大学准教授を経て首都大学東京教授(都市社会学・地域社会学・農村社会学・環境社会学)。過疎高齢化、災害、環境問題などに取り組む。著書に、『「都市の正義」が地方を壊す』(PHP新書)、『限界集落の真実 過疎の村は消えるか』(ちくま新書・生協総研研究賞)、『東北発の震災論 周辺から広域システムを考える』(ちくま新書)、『地方消滅の罠 「増田レポート」と人口減少社会の正体』(ちくま新書)、『「復興」が奪う地域の未来』(岩波書店)、『リスク・コミュニティ論 環境社会史序説』(弘文堂)、編著・共編著に『白神学』第1巻~第3巻(ブナの里白神公社)、『津軽、近代化のダイナミズム』(御茶の水書房)、『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店・地域社会学会特別賞)、共著に『人間なき復興 原発避難と国民の「不理解」をめぐって』(ちくま文庫)、『地方創生の罠』(ちくま新書)など。『津軽学』(最新は第11号、津軽に学ぶ会)の活動にも参加