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2018年の夏に考えるべきこと

戦後秩序という平和のための土台が終わる今、私たちに何が求められるのか

三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表

「アメリカ第一主義」を唱えるトランプ大統領拡大「アメリカ第一主義」を唱えるトランプ大統領

自発的に終焉する戦後秩序

 2018年夏、戦後秩序が終わろうとしています。70年余りのあいだ続いた世界史の一ページが閉じられようとしているのです。2、3年前は、多くの人はこのような転機を迎えることになるとは予測していませんでした。2010年代の主流の議論は、米中衝突は起きるのかという問題意識だったからです。

 しかし、いまの西側諸国でおきている変化は、米中の対立によるものではありません。アメリカが覇権国の座から勝手に下りて、同盟国との関係性を悪化させ、自国内政治のパフォーマンスに終始する。欧州で起きていることも、EUの価値規範に反するような旧東側諸国の退歩であり、西側諸国の変質という内政変動です。

 要するに、内政主導で戦後秩序が終焉(しゅうえん)しようとしているのであり、それは外敵によってもたらされたものでもなければ、中国主導の新秩序が勃興したから崩れていったものでもない、というのが本質なのです。

機能しない戦後秩序が前提の平和メカニズム

 平和を求める人々にとって、その意味するところは、戦後秩序を前提とした平和のためのメカニズムが機能しなくなってきているという一点につきます。

 戦後秩序とは、アメリカが西側先進諸国の復興を支え、安全保障とシーレーン防衛を提供し、国際協力のための制度化を進め、西側の平和を実現したことでした。冷戦が終結するとNATOは東方に拡大し、西側は旧東側諸国の経済圏を組み込んで秩序が拡大します。

 アメリカ単極とも言われた世界は、イラク戦争でアメリカが疲弊するまで続きます。けれども、資本主義陣営の勝利をさらに拡大して、世界に民主主義を進めるというネオコンの試みは失敗し、いまや誰もそのような青写真を共有していません。

 トランプ政権の登場は、そうした一連の経緯を通じて、戦後秩序の核をなすアメリカの意思が揺らいだことの象徴です。もちろん、トランプ政権になってもアメリカは自由貿易を推進していますし、世界中に軍事拠点を有してもいます。では、何が大きな変化だったのか。それは、アメリカが軍事介入する意思がもはや見えないこと、そして西側先進諸国をもはや優遇しないことにあります。戦争をしてくれないアメリカ、西側を優遇しないアメリカという変化が新しいのです。

アメリカの変化を明らかにした北朝鮮問題

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筆者

三浦瑠麗

三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者・山猫総合研究所代表

1980年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治、比較政治。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て現職。著書に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)など。政治外交評論のブログ「山猫日記」を主宰。公式メールマガジン、三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」をプレジデント社から発行中。共同通信「報道と読者」委員会第8期、9期委員、読売新聞読書委員。近著に『21世紀の戦争と平和 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)。

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