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平野啓一郎から、リベラルメディアへ

未来は不確定で将来不安は膨らむ。保守化する社会へ向けて、何をどう発信するのか。

WEBRONZA編集部

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 同じことは企業にも言えるのではないでしょうか。

 中央集権化して、国家や企業が巨額の資本を集めて大きな事業を担ってきたのが近代以降の歩みでした。必然的に参入障壁は高くなります。その象徴が原発です。

 しかし、インターネットの登場で、社会自体に大きなパラダイムシフトが起きました。分散化、ネットワーク化がシステムの中心になり、「チープ革命」によって、いろんな人がプロジェクトに参入し、競争による技術革新と更なるコストダウンが進む。その典型が再生エネルギーの目覚ましい発展でしょう。

 未来予測が難しいという意味では、企業も個人と同じで、いろんなことをやってバランスをとっていくしかない。何がどう役に立つのかは分からないのですから。しかし、株式会社として短期利益を求められ、「選択と集中」が過度に進められると、それができない。

 新しいことを始めるにあたり、社内で了承をとりつけるためデータ主義的になると、保守的になりがちなんじゃないでしょうか。確かな前例的な数字の根拠がなければみんな信じてくれない。余裕がある時代は「まずはやってみよう」となったけれども、今はそのようなリスクがとれない。結局は「今までうまくできたからこれからも続けていきましょう」となってしまう。自分が知っている出版業界を見ていても、思うところは多々あります。

 現政権の原発も続けましょう、リニアもやりましょう、という政策は、時代に逆行しているようにしか見えません。

 社会は政治的にも経済的にも保守化しています。過去の成功へのノスタルジーも強い。企業も内部留保は増えているが、実際、何に投資していいのかわからなくなっているところもあるんでしょう。日本という国が、今後、何で食っていくつもりなのか、成長戦略も見えないので、ヴィジョンを抱けません。それでも、幾つかのベンチャーが元気なのには希望を感じますが。

アベノミクスは将来不安を解消しない

 僕は経済の専門家ではないですが、成長戦略がないまま、金融緩和をいくら続けても、将来が見通せない以上、個人消費は伸びないだろうと思っています。インフレを見越して慌てて買い物をしている人が、身の回りで誰かいるんでしょうか?

 たとえインフレになって自分の持っているお金の価値が減るとわかっていても、多くの人はお金を使えないのです。原資が減るとわかっていても、将来が不安だから、お金を貯めておくしかない。仕事がいつまであるのかわからないし、自然災害の懸念もある。

 大体、2%の物価上昇自体がいつまで経っても夢のまた夢なんですから、信じてお金を使えという方が無理です。だったら、株で増やそうとか、そういう発想じゃないですか?

 それに、テクノロジーの進化が速すぎます。後で買うほど、格段にいいものが手に入るから、いま使っているものをなるべく長持ちさせて、本当にダメになった時に最新のものを買うというのが、すっかり習慣化している。インフレになるとわかっていても、3年後の最新のiPhoneや自動運転の車は今は買えません。単価も高いし、コロコロ買い換えるわけにもいかない。

 それに、国民が労働者としてこき使われるばかりで、消費者としての健全化が図られていません。収入が増えず、自由な時間がなくて、どうやって消費するんでしょうか。

両論併記は共感してくれていた人を失う

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