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撮影・筆者拡大「土砂投入を許さない!ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8・11県民大会」で=那覇市の奥武山陸上競技場、撮影・筆者

8月7日(火) Tさん、Yさんとともに、青森市内。Nさんは別行動で十和田市現代美術館へ。青森市内を回ったなかで、圧倒されたのは、三内丸山遺跡に隣接してある青森県立美術館。館内に入って最初の空間にいきなりドカーンと展示されていたシャガールの4点だ。これをみるだけでも青森に来た甲斐があったというものだ。バレエ『アレコ』の巨大な舞台背景画で、迫害を逃れてアメリカに亡命してきたシャガールが、アメリカン・バレエ・シアターの求めに応じて描いた4連の作品だ。4連の作品のうち3作品は青森県立美術館が購入していたが、バレエ第3幕の背景画だけはアメリカのフィラデルフィア美術館が収蔵していた。これを青森県立美術館が4年間の長期貸与の契約を結んで、この4点一堂展示となっているのだ。すばらしい。

=撮影・筆者拡大青森県立美術館にて=撮影・筆者
 同美術館には、ほかに奈良美智の常設作品展示があるほか、僕らが訪れた日には、棟方志功やウルトラマンの特撮美術家・成田亨、さらには報道写真家・沢田教一の写真展示まであって、時間が足りないくらいだった。成田亨の『ウルトラマン初稿』は、最初に考えられたウルトラマンの顔が描かれていて、目鼻口があってもっと人間に近い。沢田の写真は今見ても戦争報道とは何かを考えさせられ厳粛な気持ちになる。とにもかくにも『アレコ』全4作品の展示が突出してすばらしい! 

 その後、夜は花火大会。Tさんのご配慮で海辺の最前列という特等席で花火とねぶたの海上お披露目を満喫した。こんなに贅沢なことはない。ただし海風が冷たく、防寒準備をもっと完全にしておくべきだったかなあ。青森ねぶた。もう一度来てみたい。

 夜、宿でテレビをつけると、安田純平氏の奥様が日本記者クラブで記者会見を緊急に行っていた。つい最近ネット上で投稿された拘束中の安田さんの映像は、安田氏が現在も生存しており、しかしながらあらたな緊急事態のもとに置かれていることを物語っていて、これまでメディアとの間では沈黙を守ってきた奥様が意を決して支援を訴えたのである。何かをしなければならない。それにしても外務省の無策と放置ぶりはどうだ。自国民保護の国家の大原則はどこに行ったのだ。北朝鮮の拉致問題への対応とのあまりの落差に、国家の非情非道を思う。

「翁長氏、死去」、からだからちからが抜けていく

8月8日(水) 台風が関東に接近している。羽田までの飛行機は大丈夫だろうか。東京と連絡をとりながら、今日中に沖縄に入って明日予定されている沖縄県による防衛局への「聴聞」をしっかりと取材することを決める。問題は羽田から那覇への飛行機が台風の影響で飛ぶかどうかだ。青森から千歳経由で羽田へ。

 帰宅してすぐに出張の準備を済ませ17時10分羽田発の那覇行きの便に飛び乗る。午後4時過ぎに旧知のBより「翁長さんが危篤になった」との電話。沖縄タイムスの信頼関係にある旧知と連絡をとり「知事、意識混濁に」の速報をすでに打ったことを確認。ところが競合紙の琉球新報は「翁長知事、辞職へ 職務代理者に謝花副知事 知事選前倒しも」と一歩踏み込んだ速報を午後4時過ぎに打ったらしい。「辞職」という言葉に違和感を覚える。どのような情報からこの言葉を使ったのだろうか。意識混濁の状態で意思表示ができるのだろうか。

 さいわい羽田発の飛行機は飛んだ。台風の速度が遅いらしい。19時40分、那覇空港着。機内でずっと情報収集していた。そしてまもなく那覇に着くという19時23分、沖縄タイムスの信頼関係にある記者からメールが入った。「速報。翁長雄志氏、死去」。からだ全身からちからが抜けていくような感覚に襲われた。那覇空港のなかを走り抜け、タクシー乗り場に並ぶ。行楽客たちの長い行列がうらめしかった。

 入院先の浦添総合病院に着いたのが午後8時。RディレクターとKカメラマンと合流。病院にはすでにたくさんの報道陣が訪れていた。稲嶺恵一元知事や赤嶺政賢衆院議員ら生前に親交のあった人々が弔問に駆けつけていた。そこに僕らがぶら下がる。取材をしながら頭のなかをさまざまな思いが駆け巡っていた。「翁長さんを死に至らしめたのは誰か?」「翁長さんが命を削ってまでもまもり通そうとしていたものは何か?」。 ・・・ログインして読む
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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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