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米朝の行方(2)危機再来の恐れ

中間選挙後、トランプは豹変する可能性がある。危機をつくりだしたのは彼自身なのだ

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

 米ホワイトハウスの内情に詳しい関係者は「トランプ政権内には『予測不能』なトランプ大統領の意思と、政権スタッフが積み上げた政策の二つが存在する」と語る。この二つは頻繁に矛盾し合う性格をもつ。

 ただし、ポンペオ氏がトランプ氏の意向に反した行動を取ることはあり得ない。ポンペオ氏はワシントンの傍流で構成されるトランプ政権の中において例に漏れず、保守強硬派の「ティーパーティー(茶会)運動」出身という経歴をもつ。2010年に下院議員(米カンザス州)に初当選し、トランプ氏に米中央情報局(CIA)長官として引き立てられた。CIA長官当時、トランプ氏へのブリーフィングを行うためにCIA本部のある隣州のバージニア州からホワイトハウスへと日参し、今度は更迭されたティラーソン国務長官の後任の座を射止めた。ポンペオ氏の政治権力の根源は、トランプ氏の忠臣であり続けることにある。

 ポンペオ氏の米朝交渉が停滞する中、関係者の間で浮上している観測が、トランプ、正恩両氏による2回目の米朝首脳会談の開催である。正恩氏が9月下旬に米ニューヨークで行われる国連総会に出席した際に米朝首脳会談が行われるというものだ。

 トランプ氏は再び自らが脚光を集めることになる再会談に強い意欲を示している。トランプ氏は20日、ロイター通信のインタビューでも、再会談の可能性は「非常に高い」と語った。一方、北朝鮮側も米国の対北朝鮮政策を批判するものの、トランプ氏個人については決して批判をせず、敬意を示し続けている。停滞する米朝交渉の局面を打開する策として、北朝鮮とトランプ氏の思惑が合致する可能性がある。

 ただし、米政府関係者によると、ポンペオ氏ら実務者チームは北朝鮮が非核化協議で具体的な成果を示さない限り、再会談には反対の意向を持っているとされる。北朝鮮が非核化協議で米側の要求をのまないうちに「再会談カード」を切ってしまえば、局面打開どころか、北朝鮮が非核化にますます応じなくなる可能性があるからだ。前出のフィッツパトリック氏も「もしもトランプ氏が、正恩氏が国連総会に来さえすれば、自分のマジックで解決できると考えているなら、それはあり得ない夢だ」と語る。

 とはいえ、トランプ氏が間近に迫った中間選挙に向け、再会談が支持者へのアピールになるとして正恩氏と会う意思を固めれば、ポンペオ氏はトランプ氏の判断に従う可能性が極めて高い。トランプ氏は3月、ティラーソン、マクマスター両氏を立て続けに更迭するという大胆な人事を断行して以降、政権内では絶対的な指導力を発揮するようになり、「政権内でトランプ氏に『NO』を言える人物はいない」(米政府関係者)とみられている。北朝鮮が最も欲しがっている朝鮮戦争の終結宣言をめぐっても、ポンペオ氏らは非核化との取引には消極的な姿勢だが、トランプ氏の一存で米側が終結宣言実現の協力へと転じる可能性はある。

中間選挙後、3つのシナリオ

拡大ボルトン大統領補佐官
 トランプ氏は11月の中間選挙が終わるまでは6月の米朝首脳会談の「成功」という認定を変える可能性は低いとみられる。

 では次に中間選挙後について考えてみたい。

 中間選挙後の米国の対北朝鮮政策は、(1)「現状維持」(2)「正恩氏への批判開始」(3)「対決姿勢への転換」――の三つにシナリオが考えられる。米朝間の緊張関係の烈度は(1)→(3)へと上がることになる。

 具体的にシナリオを論じてみたい。

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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