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自民党総裁選は終わっていない

安倍氏が有利とされるが、石破氏に活路も。想定外の沖縄知事選も影響するか

田中秀征 元経企庁長官。福山大学客員教授

 だが、およそ選挙と名がつくものに油断は禁物。圧勝の可能性がいかに高くても、逆転のチャンスはどこかに伏在しているものだ。

 現状についての調査でも、党員が対象ではなく国民を相手にする調査、すなわち世論調査を見ると、結果が大きく違ってくる。

 たとえばANNの世論調査(8月18、19日実施)では、次の総裁には誰がいいかという質問に対し、石破氏という回答が42%と安倍氏の34%を上回っている。

 もちろん、これは野党の支持者や無党派層も含めた、いわば国民全体を対象とした結果であり、これをもって石破氏が有利だと言えるわけではない。実際、同じ調査でも、自民党支持層に限定すると、安倍氏という答えが58%と半数を超え、石破氏に大差をつけている。

 ただ、この調査で気になるのは、内閣支持率が38.3%、不支持率が44.6%と、依然として不支持率の高さが変わっていないことだ。これは石破氏が世論をさらに味方につけて支持を拡大できれば、活路をひらく可能性がゼロでないことを意味する。

 これには石破氏に神がかり的な能力と幸運が必要になる。ただ、前例がないわけではない。世論の力で逆転を狙った、2001年の総裁選における「小泉(純一郎)方式」である。

「自民党をぶっ壊す」で世論が動いた

 時計の針を17年前に戻す。夏の参院選を控えた01年4月、低支持率にあえいだ森喜朗内閣の後継を決めるため、自民党総裁選が実施された。本命は経世会の橋本龍太郎・元首相で、小泉純一郎氏はダークホースと言うより、むしろ大穴に近かった。各種の調査も橋本氏の勝勢で一致していたが、当初から勢いは感じられず、盛り上がりにも欠けていた。

 小泉氏はこの状況に「自民党をぶっ壊す」と叫んで暴れ出したのだ。

 彼の戦略は徹底していた。ふつう総裁選に立候補するとなると、真っ先に衆参国会議員の議員会館の部屋をあいさつに回る。それをやらなかった候補は、昭和31(1956)年の第一回総裁公選から、小泉氏以外はひとりもいないだろう。

 そのかわり、彼は自民党議員や自民党の支援団体を回る時間を惜しんで、都内の街頭に立った。銀座四丁目や渋谷ハチ公前には常に大勢の人が行き交う。だが、その中に自民党員はいたとしても、ほんの少数であろう。彼がいくら熱弁を奮っても、票に直結するわけではない。だが、テレビの報道番組が「自民党をぶっ壊す」と叫ぶ小泉候補を連日のように追いかけて放映するうちに、世論が動いた。

自民党総裁予備選で勝った地区にバラの花をつける小泉純一郎氏。地方での地滑り的な大勝で総裁の座に就く=2001年4月23日、自民党本部で拡大自民党総裁予備選で勝った地区にバラの花をつける小泉純一郎氏。地方での地滑り的な大勝で総裁の座に就く=2001年4月23日、自民党本部で

総裁選の帰趨が党外の力で変わった

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官。福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。