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自民党総裁選は終わっていない

安倍氏が有利とされるが、石破氏に活路も。想定外の沖縄知事選も影響するか

田中秀征 元経企庁長官。福山大学客員教授

 当時、ニュースステーションでは橋本、小泉両氏の支持率の動きを毎日報じていた。小泉氏の支持が右肩上がりで急増するのに対し、橋本氏の支持は急激な右肩下がりを示し、ついに8%まで落ち込んだ。

 8%の支持しかない人が総裁(首相)になると、目前の参院選に惨敗するかもしれない。参院議員はあわて、衆院議員はうろたえた。

 「もし総裁選で小泉さんを当選させなければ、次の総選挙ではあなたに投票しない」

 国会議員の事務所は、こんな支持者からの電話を、大量に受けざるを得なくなった。それこそ電話が鳴りっぱなしになったという。

 自民党総裁選の帰趨(きすう)が、世論、すなわち党の外からの強い力で、ひっくり返されたのである。

 このように自民党内の力関係が、世論の力によって変わる可能性は、常に存在している。

 もちろん、誰もが小泉氏の爽快な個性を誰もが持ち合わせているわけではない。また、ここまで鮮やかに党内の力関係を変えることはなかなか難しいだろう。だが、勝敗を覆すことはできなくても、世論調査でたとえば石破氏支持が60%、安倍氏が30%といった数字を実現すれば、その後の戦況は大きく変わるはずだ。

 世論が納得させる骨太の政策主張を出せるか

 石破氏は27日、総裁選で掲げる「政策」を発表した。森友・加計学園問題で失墜した行政の信頼を回復するためのメニューを示したほか、地方と中小企業の成長を高める「ポストアベノミクス」なども提唱。安倍首相の政策との違いを際立たせている。

 石破氏に求められるのは、世論を納得させ、動かすような骨太な政策主張である。総裁選の議論が「正直、公正」といった政治手法の次元にとどまれば、選挙はうんざりしたものになる。

 たとえば憲法。発表された「政策」では、「スケジュールありきではなく、国民の理解を得ながら進める」としているが、これだとインパクトにかける。彼の主張である9条2項削除論でも、、残念ながら耳を傾けてもらえない。個人的には、集団的自衛権の行使容認の解釈改憲に反省の意を表明し、方向転換に舵(かじ)を切ることを期待する。昨秋の衆院選時、「小池百合子(都知事)ブーム」が一気に収束したのは、彼女の憲法観、安保観が安倍首相と同じだとわかった瞬間だったことを、想起するべきだろう。

 繰り返すが、石破氏が活路をひらけるかどうかは、世論が納得する骨太の政策主張が出せるかどうかがカギを握る。もし、それができれば、国民世論は石破氏の強力な援軍になるに違いない。

総裁選で掲げる政策を発表する記者会見で質問に答える自民党の石破茂元幹事長=2018年8月27日拡大総裁選で掲げる政策を発表する記者会見で質問に答える自民党の石破茂元幹事長=2018年8月27日

翁長沖縄県知事の死と安室奈美恵の追悼文

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官。福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。