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もとの濁り恋しき習近平崇拝

内政の危機を乗り切った習氏。それでも個人崇拝への警戒感はくすぶる

古谷浩一 朝日新聞論説委員(前中国総局長)

 振り返ってみれば、最初に異変が伝えられたのは7月だった。習氏のポスターに黒ずみをかける若い女性の動画がインターネット上に流れたり、人民日報の1面から習氏の名前が消えたりするなど、習氏の個人崇拝に対する批判とみられる異例の動きが相次いで明らかになった。

 習氏は3月に憲法を改正し、国家主席職の任期を撤廃するという政治的な剛腕ぶりを見せつけたばかりだった。国家主席の終身制に道を開き、ますます党内の権力掌握を万全に進めているとみられていただけに、習氏批判が表面化したこと自体が、内外で驚きをもって受け止められたのは当然のことだった。

「宣伝思想工作に関する党中央の決定は完全に正しく、宣伝思想戦線の広範な幹部は完全に信頼に値する」

 8月21~22日に北京で開かれた全国宣伝思想工作会議で、習氏はそう強調した。わざわざ宣伝工作の正しさや幹部への信頼を口にするのは、逆にそれを揺るがしかねない状況がこの間、生じていたことを示唆させるものだ。

 宣伝部門を統括する政治局常務委員、王滬寧氏もこの会議で司会役を務め、健在ぶりをアピールしたものの、一時は失脚説が流れていた。

 一方で、中国政府のなかでメディア管理などを担う国務院新聞弁公室の蔣建国氏が7月にトップの主任職(閣僚級)から外れたのは、やはり更迭だったとの説が根強くある。蔣氏はその党のポジションである中央宣伝部副部長の職は維持しているので、完全な失脚とまでは言えないが、中国の国内メディアが習氏の個人崇拝を助長する宣伝をしたことに批判が出ていたため、この責任をとらされたようだという。

 また、中国の国内メディアをめぐっては、中央テレビが制作した「すごいぞ、我が国」などといった中国の発展ぶりをあまりにも自画自賛するような番組や報道が、中国の台頭に対する米国内の警戒感を刺激してしまい、米中貿易戦に悪影響を及ぼしたとの批判が強く出ていた。蔣氏の親族の腐敗疑惑が関係したとの情報もある。

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筆者

古谷浩一

古谷浩一(ふるや・こういち) 朝日新聞論説委員(前中国総局長)

1966年生まれ、神奈川県出身。1990年、朝日新聞社に入社。前橋支局、大阪本社社会部、東京本社経済部などを経て、上海、北京、瀋陽で特派員に。2012年1月から2013年8月まで東京本社国際報道部次長。2013年9月から2018年1月まで中国総局長。2018年4月から国際社説担当の論説委員。 1993年から1994年まで中国・南京大学、1997年から1998年まで韓国・延世大学でそれぞれ留学研修。

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