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翁長さんが遺した「オール沖縄」の精神

「沖縄のアイデンティティー」に向き合える知事選を望む

猿田佐世 新外交イニシアティブ代表、弁護士

拡大翁長雄志沖縄県知事の告別式で親族代表あいさつをする長男の翁長雄一郎氏=8月13日、那覇市、代表撮影
 沖縄県知事の翁長雄志氏が、8月8日、逝去した。自民党沖縄県連幹事長まで務めた立場ながら、辺野古基地建設反対を訴えて知事に当選し、沖縄の人々の先頭に立って新基地反対を訴え続けた。

 多くの沖縄の人々が、翁長氏の死に強い衝撃を受け、「沖縄にとって翁長さんがいかに偉大な存在だったか、失って改めて感じている」「歴史に残る知事だった」と語っている。

 翁長氏が遺したものは何か。

「オール沖縄」の精神

 「沖縄アイデンティティーで沖縄はまとまることができる」

 一言で言えば、この「オール沖縄の精神」に尽きるだろう。

 翁長氏は「イデオロギーでなくアイデンティティー」のフレーズを掲げて保守・革新を超えた沖縄の人々の連帯を訴え、幅広い立場の人々による「オール沖縄」をまとめ上げた。

 あるウチナー(沖縄人)の友人は、翁長氏が沖縄の人々にとってここまで大きな存在であるのは、翁長氏が辺野古基地建設に反対だったからだけではなく、沖縄人とは何か、沖縄のアイデンティティーとは何かを思い起こさせてくれたからであり、沖縄の人々が一体となる機会を作り出してくれたからだ、と語る。

 「沖縄の基地問題は、本土からの差別である」と広く認識されるようになったのも、翁長県政の時代であった。翁長氏は、沖縄差別を決して許さず、これに毅然と立ち向かった。

 2015年5月の辺野古基地建設反対の沖縄県民大会。参加した翁長知事はその演説を次の言葉で締めくくっている。

 「ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランドー(沖縄の人をなめてはいけない)」

 翁長さんは、生前「ウチナーンチュが心を一つにして闘う時には、おまえが想像するよりもはるかに大きな力になる」と息子に語っていたとのことである。

「オール沖縄」の微妙な舵取り

 左から右まで広がる価値観の沖縄を、一つにまとめてきたのが翁長氏であり、それは子供の頃からの翁長氏の長年の夢でもあった。

 自民党出身者から共産党までの様々な価値観の人々をまとめるために、日本本土の基地推進派のみならず、沖縄内外の新基地反対派からも常に批判にさらされており、その舵取りは本当に容易ではなかったと思う。

 辺野古基地建設に強く反対していたことから、日本本土では翁長氏をリベラルの騎手と見る人も多い。しかし、翁長氏は、最後までれっきとした保守政治家であり、そのように自分を画し続けた。

 私は本土出身者であるが、この間、日米外交の観点から沖縄の基地問題に深く関わってきた。名護市長など沖縄の政治家や市民団体の方を米国の首都ワシントンにご案内し、米政府・米議会との交渉の場を作るなどしてきた。

 翁長氏とも、「米国への訴え方」という観点から時に意見交換する機会があった。知事選の前に沖縄県ワシントン事務所の設立を提案したところ、氏は県事務所設立を知事選の公約に入れてくれた。そして、当選後、翁長氏は、実際にワシントン事務所を設立した。その後も、氏は何度もワシントンに通って辺野古基地建設反対をアメリカで訴えた。

 私が沖縄の対米外交についてあれやこれやと意見をするのを聞きながら、翁長さんから、「猿田さん、私たち保守の政治家はそういう風には動かないんだよ」と言われたことは、今も強い印象として残っている。

 これを聞いた当時の私は、「既に日本政府には十分に抵抗勢力と見られているのだから、保守のやり方とか革新のやり方とか、こだわらなくても良いのではないか」という気持ちを抱いたものである。

 しかし、右から左まで幅広い価値観の人々をまとめながら、保守政権である自民党政権に対抗していかなければならない立場にあったのが翁長氏である。そこには確固たる翁長氏自身のやり方があり、今思えば、それが故に「オール沖縄」として沖縄はまとまっていたのだと思う。

翁長氏が強調した沖縄の「自己決定権」

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筆者

猿田佐世

猿田佐世(さるた・さよ) 新外交イニシアティブ代表、弁護士

コロンビア大学ロースクールにて法学修士号・アメリカン大学にて国際政治・国際紛争解決学修士号取得。ワシントン在住を経て、米議会等で自らロビーイングを行う他、日本の国会議員や自治体等(稲嶺進名護市長等)の訪米行動を実施。米議員・米政府面談設定の他、米シンクタンクでのシンポジウム、米連邦議会における院内集会等を開催。著書に『アメリカは日本の原子力政策をどうみているか』(岩波ブックレット)、『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』(集英社)など。