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戦争経済大国(上)

平和希求の歩みが「新・大日本帝国の実現に至る助走期間」という顛末にしないために

斎藤貴男 ジャーナリスト

 では、なぜ桜島なのか。“明治150年”と己自身を直結させるかのような演出には、どのような意味が込められているのだろうか。

 私見だが、それは安倍氏が最高権力の座に留まり続けて推し進めたい国家ビジョンをストレートに、だがある程度の予備知識がないと、ロマンチックにも受け取られるように計算された表現だと思われる。すなわち明治日本の再現、もっと言えば当時の富国強兵・殖産興業、さらには大日本帝国の“夢”よもう一度――。彼が憲法改正を叫び続ける最大の動機である。

拡大憲法改正を求める集会で、安倍晋三首相のビデオメッセージが流された=2017年5月3日、東京都千代田区平河町

 もちろん、かつての大日本帝国をそのまま復活させることなど不可能だ。現在の日本にはアメリカという超権力が存在する。真の独立が図られない限り、あらゆる国家ビジョンはアメリカの意向に沿ったものにしかなり得ない。大日本帝国のような国家を志向すればするほど、それでも彼らに警戒されないためには、隷従をよりいっそう深めていく必要に迫られる。

 第二次安倍政権下でしばしば指摘される、「このままではアメリカの戦争にいつでもどこでも駆り出される国にされてしまう」という危惧は、多くの識者が、こうした因果関係を議論の前提としているからだ。そして、安倍氏がわかりやすい形で示しているような国家ビジョンは、必ずしも彼の個人的な野心だけから導かれたものではない。ポスト安倍の時代になっても、経済成長を絶対とする価値観は、アメリカの属国としての新・大日本帝国を不可避にしていくのではないか。

 来年2019年4月30日には現天皇が退位する。日本だけの特殊な時代区分に過剰な意味づけをしたくはないけれど、このままでは戦後の昭和と平成を通して形成された国家社会のあり方が、最悪のステージに進むことにもなってしまう。平和を希求していたつもりの歩みが、実は新・大日本帝国の実現に至る助走期間でしかなかった、などという顛末にしないためには、戦後史の再検討が急務である。

アメリカの戦争で大儲け

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筆者

斎藤貴男

斎藤貴男(さいとう・たかお) ジャーナリスト

1958年、東京生まれ。新聞・雑誌記者をへてフリージャーナリスト。著書に『戦争経済大国』(河出書房新社)のほか、『日本が壊れていく――幼稚な政治、ウソまみれの国』(ちくま新書)、『「明治礼賛」の正体』(岩波ブックレット)、『「東京電力」研究──排除の系譜』(角川文庫、第3回「いける本大賞」受賞)、『戦争のできる国へ──安倍政権の正体』(朝日新書)など多数。