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東京オリパラで東京の高校が大変?

大学入試新制度を控えた受験の「天王山」と重なる東京五輪。今から対策を考えよ。

鈴村裕輔 法政大学国際日本学研究所客員学術研究員

2020年東京五輪・パラリンピックのボランティア募集開始日について説明する同組織委の坂上優介副事務総長(奥右)と東京都オリンピック・パラリンピック準備局の田中彰運営担当部長(奥左)=2018年9月12日拡大2020年東京五輪・パラリンピックのボランティア募集開始日について説明する同組織委の坂上優介副事務総長(奥右)と東京都オリンピック・パラリンピック準備局の田中彰運営担当部長(奥左)=2018年9月12日

 招致活動の際に標榜(ひょうぼう)した、選手村を中心とした半径8km圏内に85%の競技会場を配置する「コンパクト五輪」の考えが実現していれば、オリンピックの競技会場のほとんどは東京の都心部に集中し、他の地域が受ける影響は軽微なものとなったはずだ。

 だが、そもそも招致活動はずさんな「見積もり」に基づいていた。招致委員会が国際オリンピック委員会(IOC)に対して行った説明をあらためて見ると、そのずさんさに今さらながら驚かされる。

 ――この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である。また夏季休暇に該当するため、公共交通機関や道路が混雑せず、ボランティアや子供たちなど多くの人々が参加しやすい。

 まさに東京の実情とはまったく異なる説明だ。一事が万事がこんな具合だから、標榜していた「コンパクト五輪」の実現も難しくなり、結果的に首都圏を中心に全国各地で競技が行われることになった。

 そのため、オリパラは東京だけではなく、その他の多くの地域でも人々の日常生活に広範な影響を及ぼすことになった。では、オリパラは小中高校の教育活動にどんな影響を与えるか。次節で詳細を検討しよう。

 小中高校にも影響を与えるオリパラ

 周知の通り、2020年7月は祝日が従来と異なる日に設定される。すなわち、7月の第3月曜日の海の日が7月23日(木)に、10月の第2月曜日の体育の日は2020年からスポーツの日と改称されたうえで、7月24日(金)に移動する。いずれも、7月24日に東京オリンピックの開会式が行われることに対応した措置だ。

 海の日とスポーツの日を合わせれば、7月第4週は4連休となるため、多くの小中高校では直前の7月22日(水)に終業式を迎える。7月23日からは夏季休業となり、オリンピックの影響を受けることはない。あえて問題点を挙げるなら、オリンピックに気を取られて、夏休みの宿題が手につかないことが懸念される程度。そう思われるかもしれない。

 しかしながら、夏休みの期間中、小中高生は一日中、家にいるのではない。夏休み中も小学生ならラジオ体操やプール教室に、中高生は部活動をするため登校することは珍しくない。林間学校や臨海学校、あるいは部活動の合宿などで、学校が出発と帰着の拠点となることもあるだろう。

 こうした事情を踏まえれば、オリパラが小中高生の生活に影響を与えることが想像できるだろう。たとえば、オリパラにおける重要な課題の一つは、観戦者の移動手段の確保である。現在すでに、オリパラの期間前後の民間のバスの予約は難しくなっている。さらに東京都では、東京都交通局のバスだけでなく、都立学校が所有しているバスも徴用する計画があるとされている。

 民間のバスの手配が困難になれば、林間学校や部活動の合宿の移動はバスではなく電車となり、家庭の費用負担が増える可能性がある。また、登校を規制したり、かわりの行事を計画したりする必要がでるかもしれない。合宿先を変更するとしても、2019年度末までに次年度の活動を確定させるために残された時間は1年半しかない。特に公立学校の場合は教育委員会の検討を経る必要があるから、各校の持ち時間はさらに少なくならざるを得ない。

2010年の五輪が東京に決まり、調印式を行う(左から)安倍晋三首相、IOCのロゲ会長、JOCの竹田恒和会長、猪瀬直樹東京都知事=2013年9月7日、ブエノスアイレス拡大2010年の五輪が東京に決まり、調印式を行う(左から)安倍晋三首相、IOCのロゲ会長、JOCの竹田恒和会長、猪瀬直樹東京都知事=2013年9月7日、ブエノスアイレス

 対策の遅れが目立つ都教委や都教育庁

 

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筆者

鈴村裕輔

鈴村裕輔(すずむら・ゆうすけ) 法政大学国際日本学研究所客員学術研究員

1976年、東京生まれ。法政大学国際日本学研究所客員学術研究員。法政大学大学院国際日本学インスティテュート政治学研究科政治学専攻博士課程修了・博士(学術)。専門は比較文化。主著に『メジャーリーガーが使いきれないほどの給料をもらえるのはなぜか?』(アスペクト 2008年)、『MLBが付けた日本人選手の値段』(講談社 2005年)がある。日刊ゲンダイで「メジャーリーグ通信」、大修館書店発行『体育科教育』で「スポーツの今を知るために」を連載中。野球文化學會会長、アメリカ野球愛好会副代表、アメリカ野球学会会員。

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