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戦争経済大国(下)米国へのコンプレックスと隷属

安倍政権の対米従属。日本国民がアメリカの戦争に駆り出される未来が危惧される

斎藤貴男 ジャーナリスト

 取材を重ねるほどに思い知らされたことがある。政財官界の指導者層にとって、国家安全保障の目的とは何よりも、グローバル・ビジネスの利益を擁護し、極大化を図ることだという実態。あるいは、彼ら総体の自己イメージが、少し前までの“第二次世界大戦の敗戦国”から、“東西冷戦の戦勝国”へと急激に変化してきているらしい様子、空気だ。

拡大桜島を背景に自民党総裁選への立候補を表明する安倍晋三総裁=2018年8月26日、鹿児島県垂水市

 朝鮮戦争やベトナム戦争における経済的な“成功体験”と“湾岸戦争トラウマ”が、これに拍車をかけていく。筆者は本連載の第1回目「戦争経済大国(上)」で、安倍首相が総裁選出馬表明の舞台設定に桜島を背にする構図を選んだのは、「大日本帝国の“夢”よもう一度」という意味を込めたかったのではないかと書いた。そのような人物が高い支持率を維持し続けている現実は、言論統制やジャーナリズムの堕落という側面もあるにせよ、彼と一般の意識がさほど大きくは乖離していない状況を示してもいるのではないか。敗戦国の立場に甘んじてきた戦後70年余のうちにマグマが溜まり、またしても噴火が近づいているかのような社会心理と言うべきか。

アメリカへのコンプレックス

 それでいて、しかし、敗戦から4分の3世紀近くにも及ぶ占領あるいは安保体制下で、日本人の深層心理にまで刻み込まれたアメリカへのコンプレックスには、いささかの揺らぎもない。

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筆者

斎藤貴男

斎藤貴男(さいとう・たかお) ジャーナリスト

1958年、東京生まれ。新聞・雑誌記者をへてフリージャーナリスト。著書に『戦争経済大国』(河出書房新社)のほか、『日本が壊れていく――幼稚な政治、ウソまみれの国』(ちくま新書)、『「明治礼賛」の正体』(岩波ブックレット)、『「東京電力」研究──排除の系譜』(角川文庫、第3回「いける本大賞」受賞)、『戦争のできる国へ──安倍政権の正体』(朝日新書)など多数。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです