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安倍氏の総裁3選で見えた派閥政治の復活

三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表

ここで、これまでの安倍政権の特質を振り返ってみたいと思います。具体的には、なぜこれほどの長期政権が可能だったのかという問いと、何を目的とした政権だったかという問いです。

自民党総裁選の選挙対策本部の発足式で派閥の会長らと壇上に並ぶ安倍晋三首相(左から2人目)=2018年9月3日拡大自民党総裁選の選挙対策本部の発足式で派閥の会長らと壇上に並ぶ安倍晋三首相(左から2人目)=2018年9月3日

 安倍政権を支える構造は、清和会(細田派)、志公会(麻生派)、志師会(二階派)という主流派閥の「鉄の同盟トライアングル」によって成り立っています。安倍政権が壊れるのは、この鉄のトライアングルが壊れるときです。

 長い間、政権の座にあることによって、選挙の公認権と政治資金を握る総裁派閥の権力は増しています。そのうえ、平成になって進んだ政治主導を目指した各種改革の結果、首相の権力が高まっているという現実があります。

 安倍政権が長らく求心力を保ってきたのは、世界の潮流から見れば正しい課題設定(デフレ脱却、現実的な安全保障政策など)をしたうえで、具体的な改革については、党内の支持基盤や自民党支持基盤を危機に晒(さら)さない程度の踏み込みしか行わないという「安全運転」に徹しているためです。そのうえで、民主的な合意形成の必要が低く、首相のリーダーシップがものをいう金融政策と外交政策の分野において、主要な成果を挙げるという「勝ちパターン」を繰り返してきました。

 強い官邸を築き、官僚機構の挙げてくる施策にうまく優先順位を付けることによって、堅実な政権運営を図る。「モリカケ問題」への対応には稚拙さが目立ちましたが、その他のスキャンダルについては、歴代の自民党政権と比べて、比較的危機管理に長(た)けています。国政選挙を細かく刻んで実施し、民意の更新を図るというサイクルも順調に回ってきました。

 諦めていない「戦後レジームからの脱却」

 ただし、どんな長期政権にも終わりの時が訪れます。レイムダック化も避けられません。今回の総裁選を受け、党内から異論が出やすくなったり、改革に反対する声が大きくなったりする可能性が高まると、首相のリーダーシップはたいてい、自らの裁量が大きい外交安保政策に向くようになります。また、長期政権の特徴として、政権の終盤になると「歴史的業績」に目が向きやすくもなります。安倍政権もおそらく、外交・安保の分野で、象徴的な意味を持つ施策に取り組もうとするでしょう。

 そもそも安倍政権は「戦後レジームからの脱却」を課題として掲げていました。最近ではその言葉を封印したと言われていますが、諦めたのかと言えば、私はそうは思っていません。事実上、対米自立以外のほとんどの項目については、「戦後レジームからの脱却」を実現しているからです。

 具体的に言えば、それは現実的な安全保障政策であり、歴史問題へのピリオドであり、国家の権力行使を嫌忌する日本社会にあって、機密保護や情報管理を他の先進国並みにする施策などでした。したがって、安倍政権の最後の3年間は、憲法改正や自立的な防衛強化、北方領土問題や拉致問題といった課題の比重がますます高まっていくと思われるのです。

政権交代の道筋示せぬ立憲民主党

 

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筆者

三浦瑠麗

三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者・山猫総合研究所代表

1980年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治、比較政治。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て現職。著書に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)、『21世紀の戦争と平和 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)など。政治外交評論のブログ「山猫日記」を主宰。公式メールマガジン、三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」をプレジデント社から発行中。共同通信「報道と読者」委員会第8期、9期委員、読売新聞読書委員。近著に『日本の分断―私たちの民主主義の未来について』(文春新書)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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