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憲法9条、国民投票で真に問うべきこと(上)

安倍首相は総裁選に勝ち、改憲へ動く。その前にここだけは確認しておきたい

石川智也 朝日新聞記者

 安倍首相は投開票終了後、「憲法改正は最大の争点だった。結果がでた以上、一致団結して進んでいく」とあらためて改憲への意欲を強調した。一強のおごりへの批判票が予想以上にあったにしても、今後の政治日程からして発議がかなり難題であるにしても、首相は宿願に向けてアクセルを踏んでいくだろう。

 一寸先は闇の政治の世界、実現可能性について予断はもてないが、安倍改憲案の行く末がどうなろうとも、論じなければならないことがある。それは、日本国民が70年近く曖昧にしてきた9条問題の核心である。

日本国憲法9条
1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 おさらいしておこう。

 安倍首相は昨年5月3日の憲法記念日、戦力不保持と交戦権否認を謳った9条2項を維持したまま自衛隊の存在を明記するという改憲案を打ち出した。これに基づき、自民党憲法改正推進本部は今年3月、たたき台素案をまとめた。

自民党の9条改正案(「条文イメージ・たたき台素案」今年3月公表)
9条の2
1項 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
(※9条全体を維持した上で、その次に追加)

 首相は「自衛隊の任務や権限に変更は生じない」「何も変わらない」と繰り返し強調。これに対し、立憲民主党や共産党は「集団的自衛権を容認した安保法制とその下での自衛隊の存在を追認することになり、活動への歯止めがなくなる」「1項2項が空文化する」と反発。また、憲法学者や法律家からも、「自衛隊の行動をどこまで認めるのかすべて法律に丸投げになり、2項が死文化する」(長谷部恭男・早大教授)、「何をやっても、どんな装備を持っていても憲法で認められる存在ということになる。政府と国会に白紙委任することになる」(阪田雅裕・元内閣法制局長官)などと疑問の声があがった。

 こうした「『何も変わらない』はウソ」という反論は「護憲派」メディアに盛んに取り上げられ、すでに始まっている改憲発議阻止運動の拠り所になっている。ただ、安倍改憲案が国民投票で承認されようが否決されようが、9条問題の核心に何ら決着はつかない。発議が遠のこうとも、その事情は変わらない。

国民投票で問われるべきは「自衛戦争」の是非

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。岐阜総局などを経て社会部でメディアや教育、原発などを担当。2018年4月から特別報道部記者。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学感染症情報分析センターIDIA客員研究員。共著に「それでも日本人は原発を選んだ」(朝日新聞出版)等

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