小池みき(こいけ・みき) フリーライター・漫画家
1987年生まれ。愛知県出身。2013年より書籍ライター・編集者としての活動を開始。『百合のリアル』『残念な政治家を選ばない技術—選挙リテラシー入門』など、新書を中心に書籍の企画・構成に関わる。エッセイコミックの著書に『同居人の美少女がレズビアンだった件』『家族が片づけられない』がある。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
「政治家の仕事とは、勇気と真心をもって真実を語ることだ」という故・渡辺美智雄氏(元衆議院議員・副総理)の言葉を、私は石破茂元幹事長の著書『真・政治力』(2013)で知った。良い表現だなと思った。
政治とは言葉そのものであるとか、言葉は政治の命である、というような言い回しはよく見聞きするけど、「真実を語ること」という表現には、また何かときめくものがある。ギリシャ哲学チックな趣を感じる。もしかしたら元ネタは、昔の政治哲学書か何かかもしれない。
私は、渡辺氏の政治家としての業績も、人となりもよく知らない。ついでに言えば、石破氏のこともよくわからない。ライターとして一度取材をさせていただいたことがあるものの、「つかませない、おっかない人」という印象ばかり残っている(あと、議員会館の部屋に置かれたフィギュア)。
そんなわけで、渡辺氏にも石破氏にも格別の思い入れはないのだが、この言葉だけは強く頭に刻まれてしまったし、二人の政治家とはもはや無関係に、私の中でも重要な言葉と化している。それはたぶん僭越ながら、自分の仕事にも通じるものを感じたからだ。「勇気と真心をもって真実を語ること」が政治家の仕事なら、文章を書くこともまた、形は違えどやっぱり「政治」なのだなと思った次第である。
なぜ、真実を語ることが政治家の仕事なのか。それは私が思うに、より深いところにある真実を語ろうという努力こそが自分に克己のチャンスを与えるのであり、それに挑めば自分だけでなく、周りの人間もつられて動くことになるからだ。
大勢に伝わるそのうねりが、語られた「真実」に共鳴し、増幅し、ビジョンの実現に向かってさらに大きな波を起こしていく――。どれだけ綺麗事であっても、それが「政治家の仕事」の、つまり「政治」という営みの根幹にあるのだと、個人的には信じる。