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総裁選と「新潮45」で考えた政治をよくする方法

小池みき フリーライター・漫画家

特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を載せた月刊誌「新潮45」10月号 拡大特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を載せた月刊誌「新潮45」10月号

 そんな中で起きたのが、保守系言論誌「新潮45」10月号の特集、「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」騒動であった。

 これは杉田水脈議員による同誌8月号への寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」に対して批判が殺到したことを受けての特集で、かなり奇怪な内容のエッセイが集められた結果、前回よりさらに激しく燃えに燃える事態となってしまった(最終的に、9/25に新潮社の判断で休刊が決定)。

 同特集では、何人もの寄稿者が杉田氏のことを、「何にもおもねらない、率直な発言力が好ましい」という調子で肯定している。

 たとえば文芸評論家の小川榮太郎氏は「杉田氏には、多くの人が内心共感しつつも、黙らせられているテーマについて果敢に発言する珍しい蛮勇がある」、評論家の八幡和郎氏は「うるさい人を怒らせない方が良い、大人の判断をしろといった同調圧力に屈しない規格ハズレの人は貴重だと思う」といった風に。つまり杉田氏は、彼らから見れば「勇気と真心をもって真実を語る」政治家に属するらしい。

 杉田氏に寄せられた賞賛や共感の言葉を見ながら、私はどんどんいたたまれない気持ちになっていった。なぜならそれと似たようなことを、この原稿の編集者氏から私自身が言われていたからだ。私の場合は実績をそう評価されたのではなく、「そのような役割を期待します」というニュアンスで言われたのだが。

 もちろん編集者氏は過激思想の持ち主ではないので、私に暴言スレスレのかっ飛ばし系読み物を頼んだわけではない。ただ、ある種の権力批判をリクエストされたのもまた事実である。その際はこのように言われた。

 「率直な意見の方が、多くの人が共感すると思います。みんな、今の政治はおかしいなってどこかで思っているはずなので」

 「新潮45」の寄稿者たちも、きっと編集者にこう言われていたのだろう。つまり、あっちでもこっちでも、まったく同じことが起きているのである。

 ちょっと激しめのことを書けそうな若いの(我が国は言うまでもなく、51歳でも総理大臣から「若い」と言ってもらえる国である)を連れてきて、「率直に」何かを批判させる。すると、同じ陣営のフォロワー各位が溜飲を下げ、「いいね」ボタンを連打してくれる。敵対陣営の人々も、批判のために記事をシェアしてくれ、出版不況のなか雑誌が完売したりする。書き手が多少燃えようと、めったなことでは運営会社自体がつぶれたりはしない(「新潮45」の件は、意外に大掛かりな後始末が発生したけれど)。

 この構造を、むなしいと思わずにいられるだろうか。

マックの女子高生と首相を批判する小学生

 

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筆者

小池みき

小池みき(こいけ・みき) フリーライター・漫画家

1987年生まれ。愛知県出身。2013年より書籍ライター・編集者としての活動を開始。『百合のリアル』『残念な政治家を選ばない技術—選挙リテラシー入門』など、新書を中心に書籍の企画・構成に関わる。エッセイコミックの著書に『同居人の美少女がレズビアンだった件』『家族が片づけられない』がある。