住岡尚紀(すみおか・なおき) 明治学院大学生
1995年喜界島生まれ。鹿児島県立喜界高校を卒業後、明治学院大学に入学。2015年に国連ユースボランティアでウガンダ共和国のUNDPに派遣。2016年、内閣府次世代グローバル事業世界青年の船に参加。バイトを4つ掛け持ちしながら俳優業にも挑戦中。中高の社会科と英語科の免許取得を目指し在学中。将来の夢は「島と世界を繋ぐジャーナリスト」。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
激しい腹痛、極度の寒気。同居人のクリスは「マラリアの可能性が高い」と言った…
「ク、グレス、グラス……」
震えで、ろれつが回らない。クリスが目を覚ましたのは午前4時ごろだったようだ。彼に毛布と一杯のお水を貰い、一旦寒気は治まった。
「マラリアの可能性が高い」
クリスが言った。僕は知らない間に蚊に刺されていたのかもしれない。
クリスも国連事務所で働いている。彼はすぐに上司に連絡したほうがよいと言ったが、とりあえず様子をみることになった。
しばらくして再び寒気が襲う。これまで経験したことのない寒気だ。
クリスはすぐさま救急車を呼びに最寄りの病院へ走った。
呼吸が浅くなる。息が苦しくなる。お水が欲しい。だけど、誰も居ない。
顎からガクガクと震え、言葉が出ない。意識が朦朧としていて、何を言ったか覚えていない。その間にも、だんだんと意識が遠のいていく。体が燃えるようだ。
必死にもがくが、体全体から心臓の音、喉を伝う唾の音が脳内に響き、体がいうことを聞かない。全身から汗が吹き出し、息が出来ない。
一秒一秒が永遠のように感じた。気付くと、大声で叫んでいる。
「死にたくない!! やだー!!」
クリスが戻るまで数十分間、僕の頭の中にはなぜかZARDの「負けないで」がリピートされていた。
(あと少しって、あと何分だよ……)
ときに叫び、ときに歌う。その繰り返しだ。
クリスが誰かを連れて戻ってきたのは午前7時過ぎだったようだ。
「へい! スミ! ARE YOU OK?」
「……」
クリスの声は聞こえたが、僕がなんと答えたかは覚えていない。意識が朦朧としていく。だが、次の言葉は頭に入った。
「この家までの道のりが険しすぎて、救急車は入れないんだ。病院へ歩いていかなければならない」
歩く――。この時の僕には厳しすぎた。
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