梅原季哉(うめはら・としや) 朝日新聞記者(東京本社編集局長補佐)
1964年生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部卒。93~94年、ジョージタウン大学外交学部MSFSフェロー。88年朝日新聞入社、長崎支局、西部本社社会部などを経てブリュッセル、ウィーン、ワシントン、ロンドンで特派員。著書に『ポーランドに殉じた禅僧 梅田良忠』(平凡社)、『戦火のサラエボ100年史』(朝日選書)。
今のアメリカは、「冷戦(Cold War)」と「内戦(civil war)」を掛け合わせた、言ってみれば「冷たい内戦(Cold Civil War)」に突入しつつあるのではないか……。
いささか大げさに響くかもしれない。でも、そんな考えが私の脳裏をかすめた。
9月後半、米国を2年ぶりに訪れた。私にとって、最初は大学生として留学し、社会人になってからは特派員として駐在した経験がある土地でもある。学生時代から数えれば足かけ30年以上にわたってアメリカの政治社会に関心を払ってきたし、ワシントンの政治情勢はそれなりに把握しているつもりだった。だが、現場で人々の話を聞き、情勢を見聞きすると、そこには想像を超えた深い分断が存在するのを、改めて肌身で実感させられた。
ドナルド・トランプ氏が大統領選で勝利を収めてから2年近く。11月6日投票の中間選挙を前にした今のアメリカ政治は、混乱が深まるばかりのように見える。もちろん、現在のアメリカは実際に戦火が交わる内戦の状態ではまったくない。だが、「政治的、社会的に相いれない存在」として互いを敵視する二つの陣営によって、国内が鋭く分断された状態にあることは間違いない。
それを「冷たい内戦」とでも形容してみたくなったのは、片方の当事者が抱く憎悪の念が、むき出しで「リベラルなメディア」という代表的な「敵」に向けられる現場に居合わせたからだった。
しかも、その憎悪を煽(あお)る先頭に立つのが、ホワイトハウスの主であるトランプ大統領本人なのだ。
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